GPSによる農作業モニタリングのための圃場内作業識別プログラム

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要約

GPSデータのベクトル情報から圃場内での機械の前進・旋回・停止など作業状態を識別する圃場内作業識別プログラムである。収穫や耕うんなどの作業時に1秒ごとに記録された一連のGPSデータから自動識別して、作業時間などを把握する。

  • キーワード:GPS、タイムスタディ、作業情報、GIS、作業能率、計測、モニタリング
  • 担当:九州沖縄農研・九州畑輪作研究チーム
  • 代表連絡先:電話0986-24-4277、電子メール omine@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・畑作、共通基盤・作業技術
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

小面積で分散した圃場の集積による畑作経営の大規模化は、作業の効率化および低コスト化を困難にしている。これまでに、効率的な圃場管理のためにITを活用しGIS上でGPSを用いた作業圃場の位置確認の技術などは開発されているが、分散した各圃場内での農作業の進捗状況やその詳細な作業内容を逐次把握することは容易ではなかった。そこで、効率的に作業計画・管理するために、小型GPSの測位情報から圃場内での作業状態を自動的に識別する技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 圃場内作業識別技術は、作業時に記録したGPSデータから圃場内での機械の走行、旋回、停止など作業状態を識別する。開発した圃場内作業識別プログラムは、1秒ごとのGPSの時刻、対地速度と進行方向データから識別条件式にて従って自動的に作業の識別処理を行う。識別結果は、FlagとしてGPSデータに付加し出力する(図1)。
  • 作業の識別手順は、最初に全計測時間1秒ごとの速度から「走行」と「停止」、進行方向から「前・後進の切替」を識別し、並行して統計処理にて作業列の方向を求める。続いて、時系列で進行方向の移動平均と作業列の方向および経過時間を比較し、「旋回」、「直進(列走行)」、「移動(旋回と列走行以外)」を識別する(図1)。
  • 識別に用いるGPSデータは、標準的なNMEA(米国海洋電子機器協会)フォーマットを用い、その中でも測位日時、緯度・経度、速度、方向などの情報を含むRMCセンテンスで、1秒毎に記録したものを用いる(図2)。5秒以内のGPSデータの連続欠落は線形補間し、6秒以上の連続欠落は、欠落時間として扱う(図1、表1)。
  • 適用可能なGPS機器は、NMEAのRMCセンテンスを、測位精度2DRMS<1.5m、1秒間隔で記録できる仕様であれば機種は問わない。
  • 圃場内作業識別プログラムによって自動識別したタイムスタディ結果と、目視と時計によるタイムスタディ結果を比較すると、総作業時間における誤差は2.6%で、各作業時間の誤差は数ポイントであった(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 本識別技術は、トラクタ、収穫機、田植機、運搬車のGPSデータなどに適用でき、これらの作業履歴の記録や圃場内作業のモニタリングなどに活用できる。
  • 開発した圃場内作業識別プログラム(開発言語:Visual Basic 6.0, 動作OS:Windows XP/Vista)は、試用版として配布可能とする予定である。
  • 本識別技術は「直進(列走行)」の列は1方向の直線のみ扱い、それ以外の外周に沿って曲がるなど直線でない列走行となる圃場では「移動」と識別される点に留意する。

具体的データ

図1 GPS情報による作業識別のしくみ(圃場内作業識別プログラム)

図2 識別に用いるNMEA-0183フォーマットのRMCセンテンスの概要

表1 作業識別によるタイムスタディ

その他

  • 研究課題名:九州地域における畑地高度利用のための畑輪作システムの開発
  • 課題ID:211-k.9
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2007~2008年度
  • 研究担当者:大嶺政朗、杉本光穗