畑地における牛ふん成型堆肥施用後の亜酸化窒素発生および発生要因

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要約

牛ふん成型堆肥を畑地へ施用すると、数日後に化学肥料、バラ堆肥の施用と比べ多量の亜酸化窒素が発生する。その発生要因は、主として成型堆肥中の脱窒によると考えられる。

  • キーワード:牛ふん成型堆肥、亜酸化窒素、畑地、脱窒菌、水分条件
  • 担当:九州研・土壌環境指標研究チーム
  • 代表連絡先:電話096-242-1150
  • 区分:九州沖縄農業・生産環境
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

偏在する家畜ふん堆肥の広域流通を促進すると同時に、耕種上の取り扱いの利便性などから、堆肥のペレット成型化とその利用に関する試験研究が進められ、普及も進んでいる。一方、温室効果ガスの一つであり、京都議定書で削減対象となっている亜酸化窒素(N2O)は、農耕地において窒素肥料や家畜ふん堆肥の投入に伴い発生することが知られている。しかし、成型堆肥の畑地への施用による亜酸化窒素発生に関する知見は少ない。そこで、牛ふん成型堆肥を畑地へ施用した際の亜酸化窒素発生について明らかにするとともに、その発生要因について解明する。

成果の内容・特徴

  • 牛ふん成型堆肥施用3~4日後に他の処理区と比べ高い亜酸化窒素発生ピークが確認され、およそ基肥施用17~26日後に収束する(図1)。
  • 亜酸化窒素発生量は、牛ふんバラ堆肥区、化学肥料区、無窒素区に比べ、牛ふん成型堆肥区で有意に高い。また、亜酸化窒素排出係数〔(各処理区発生量-無窒素区発生量)÷窒素施用量×100〕は、牛ふんバラ堆肥区で0.013%、化学肥料区で0.034 %であるのに対し、牛ふん成型堆肥区で0.574 %である(表1)。
  • 基肥施用後に成型堆肥中の脱窒菌数は大幅に高まり、土壌の約103~104倍となる(図2)。
  • 水分が最大容水量の60%以上の土壌(厚層多腐植質黒ボク土)に成型堆肥を混和すると亜酸化窒素が発生するが、最大容水量の約50%の土壌ではほとんど発生しない(図3A)。また、土壌水分が高いほど成型堆肥の水分も高い(図3B)。
  • 施用後の成型堆肥中で脱窒菌数が増加すること(図2)、また、高い土壌水分では混和した成型堆肥の水分も高まり(図3B)、高水分環境での亜酸化窒素発生は脱窒の寄与が大きいことが知られていることから、畑地への成型堆肥施用に伴う亜酸化窒素の多量発生は、主として成型堆肥中の脱窒によるものと考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は牛ふん成型堆肥の畑地への施用に伴う亜酸化窒素発生の把握ならびに発生抑制技術開発に活用できる。
  • 本成果における圃場試験の結果は九州沖縄農業研究センター(熊本県合志市)の試験圃場(厚層多腐植質黒ボク土)にて得られたものである。

具体的データ

図1 圃場試験における亜酸化窒素ガスフラックスの推移(2007年秋作) 2006年秋作、2007年夏作についてもほぼ同様の推移となった。

図2 圃場試験における各処理区土壌、成型堆肥中の脱窒菌数(2007年秋作)

表1 圃場試験における亜酸化窒素発生量、亜酸化窒素排出係数

図3 異なる水分の土壌へ成型堆肥を混和した際の亜酸化窒素発生ならびに成型堆肥水分 Aは土壌水分と亜酸化窒素発生の関係、Bは土壌水分と成型堆肥内水分との関係を示す。土壌水分は最大容水量の80%、60%に調整、または、生土のまま(A:最大容水量の51%、B:同左 48%)とした。

その他

  • 研究課題名:有機物投入土壌における窒素代謝に関わる土壌生物機能評価法の開発
  • 課題ID:214-q.2
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006-2010年度
  • 研究担当者:山根 剛