畑地由来の浮遊土砂流出防止のための二層ろ過層の土砂捕捉特性

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要約

上層に粗い素材を配した二層ろ過層は、単層ろ過層と比較して、高濃度(数千mg/l)の浮遊土砂を効率的に捕捉する。主要な捕捉部位は、上層と下層との境界上であり、土砂の最大粒径が大きいほど捕捉効率が高い。

  • キーワード:土壌流出、浮遊土砂、沈砂池、二層ろ過、土砂捕捉
  • 担当:九州沖縄農研・南西諸島農業研究チーム
  • 代表連絡先:電話096-242-1150
  • 区分:九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

南西諸島において、畑地からの土壌流出の抑制は、肥沃な作土の損失や沿岸域への影響などを回避する観点から重要な課題である。近年、農業排水路系の最末端に位置する沈砂池において、ろ過を原理とする浮遊土砂の流出抑制が試みられているが、ろ過層の早期の目詰まりが指摘されるなど、試行錯誤の段階にある。二層ろ過を含むろ過技術は、上水道分野において研究蓄積があるが、高濃度でかつ多様な粒径分布を特徴とする畑地由来の浮遊土砂に対するろ過特性は明らかでない。そこで、高濃度でかつ粒径分布の異なる土砂懸濁液に対するろ過、特に二層ろ過層による土砂捕捉特性を明らかにする。

成果の内容・特徴

石英砂単層および石英砂層上に粗大なろ材を配した二層ろ過層において、最大粒径と濃度を変えた土砂懸濁液に対するろ過(土砂捕捉)特性を室内実験により検討した(図1)。

  • 二層ろ過による連続ろ過使用可能時間(ろ過速度が初期(5m/day)の70%まで低下するまでの時間)ならびに土砂捕捉量は、単層ろ過のそれらに比べて3~24倍であり、土砂の最大粒径の大きいほど二層ろ過の優位性が高い。特に、土砂の最大粒径70μmの条件では10倍以上の効率となる。この数値は、上水道分野で報告されてきた数値(数倍)より顕著に高い。(表1)。
  • 二層ろ過層では、上層と下層との境界上に多量の土砂が捕捉される。一方、下層における捕捉量はごく少ない(図2)。
  • 二層ろ過では、幅広い粒径範囲で土砂が捕捉される。特に、粗い粒径ほど捕捉率(流出防止効果)が高く、約10μm以上の土砂の捕捉率はほぼ100%である(図3)。
  • 表1で高い捕捉効率が得られた土砂粒径・濃度の条件は、沖縄県内の沈砂池で観測された浮遊土砂の特性(最大粒径約100μm、最大流入濃度数千mg/l)に相当する。よって、本研究で得られた二層ろ過特性の知見は、沈砂池において浮遊土砂の流出抑制のためのろ過技術への活用(ろ過層の設計など)が期待できる。

成果の活用面・留意点

  • 本知見は、図1に示したろ材に関して得られたものである。
  • 二層ろ過層においてほとんどの土砂が上層部で捕捉されるという知見は、上層および下層のごく上部の交換により、ろ過機能が維持されることを示唆している。

具体的データ

図1 実験装置(a)およびろ過層の構成とろ材(b)

表1 単層および二層ろ過における連続ろ過使用可能時間および土砂捕捉量

図2 二層ろ過層における土砂捕捉部位(土砂最大粒径70μm、濃度4350mg/l)

図3 二層ろ過における流入・流出土砂粒径分布(土砂最大粒径70μm、濃度4350mg/l)

その他

  • 研究課題名:南西諸島における環境保全型畑作推進のための土砂流出制御技術の開発
  • 課題ID:214-v
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2007年度
  • 研究担当者:塩野隆弘(現農工研)、原口暢朗(土壌環境指標研究チーム)、吉永育生、生駒泰基
  • 発表論文等: