久住高原で草地更新後に生じたニガ土の乾燥収縮による表土の土塊化

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要約

久住高原の草地で2006年秋に生じた表土の土塊化は、特殊な黒ボク土「ニガ土」が牧草更新による露出と少雨の影響で乾燥し強収縮したためである。

  • キーワード:黒ボク土、ニガ土、土塊化、土壌収縮、草地更新、久住高原
  • 担当:九州沖縄農研・土壌環境指標研究チーム、周年放牧研究チーム、九州大
  • 代表連絡先:電話096-242-7764
  • 区分:九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

久住高原のある草地で、2006年秋に黒ボク土の表土が土塊を形成する現象が見られた。この草地は約20年前に造成され、永年性牧草のオーチャードグラスが栽培されているが、同年夏に牧草の更新のため全面除草し播種を行った後に土塊化が生じたものである。この土塊化の原因を土壌調査と分析により解析する。

成果の内容・特徴

  • 草地内の一部で、9月上旬に播種した牧草が生育せず、11月下旬の時点でパッチ状に裸地化している。土壌表面は収縮により亀裂が入り、亜角塊状の小土塊を形成している(図1)。
  • この草地の土壌は90cm以深まで黒色土層が続く多腐植質厚層黒ボク土で、50cmまでの山中式硬度は21mm以下、仮比重は0.40以下、固相率は19%以下と、緻密度が小さく軽しょうな黒ボク土である(表1)。
  • 100 mLコアで採取した土壌を炉乾すると強く収縮し、生土時の体積の55%以下になる(図2)。これは阿蘇・久住地域に分布し、乾燥に伴い収縮し(風乾で60%以下、炉乾で55%以下)硬い土塊を形成する特殊な黒ボク土「ニガ土」の特徴である(図3)。
  • 2006年9月下旬~11月中旬のアメダス竹田観測点の雨量は計10 mmと少雨であった。この気象条件と草地更新による植生被覆の除去により、ニガ土が乾燥・収縮して土塊化したものである。この土塊化が、出芽した牧草の生育に影響して、裸地化につながった可能性がある。

成果の活用面・留意点

  • 草地の更新時に表土のニガ土が土塊化する事例は報告されておらず、草地管理の上で留意すべき現象である。
  • ニガ土の分布、特性、土壌管理の詳細については宮内ら(熊本県農試報、1976)、久保寺・山田(九州農業研究成果情報、1995)を参照されたい。

具体的データ

図1 播種2か月半後の草地の状況(左:パッチ状の裸地化 右:土壌表層の土塊形成)

表1 土壌断面形態と物理性

図2 100 mLコア試料の炉乾後の収縮

図3 ニガ土と通常の黒ボク土の収縮度合い**

その他

  • 研究課題名:有機質資材多投入地帯における合理的な資材施用のための土壌環境指標及び土壌管理技術の開発
  • 課題ID:214-q.2
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:久保寺秀夫、増田泰久(九州大院農)、小路敦
  • 発表論文等: