栽植様式及び播種密度が湛水直播水稲キヌヒカリの生育に及ぼす影響

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要約

湛水直播したキヌヒカリの栽植様式において、散播は条播より分げつ発生が多い。播種密度別では、高密度になる程最高分げつ期が早くなり、出穂前の乾物生産割合が大きく、倒伏程度が大きくなる。条播は散播より生育後期の乾物生産が大きくなる特徴を持つ。

  • 担当:農業研究センター作物生理品質部稲栽培生理研究室
  • 連絡先:0298-38-8952
  • 部会名:水田・畑作物
  • 専門:栽培
  • 対象:稲類
  • 分類:指導

背景・ねらい

苗を機械移植する移植栽培と異なって、直播栽培では本田に直接に播種するので様々な播種様式の選択が可能であり、低コスト化をめざして多くの直播様式が試みられている。作物栽培の立場からこれらの方式を評価し、その得失を明らかにすることは直播栽培導入を図る上で重要である。そこで、栽植様式別(散播、条播)、播種密度別の湛水直播水稲(キヌヒカリ)の生育特性について検討する。

成果の内容・特徴

  • 散播の初期生育における茎数は播種密度が高い程多く、最高分げつ期も早くなる(図1)。同じ播種密度で散播と条播を比較すると、最高茎数は散播が多く、条播では畦間が狭い程多いが、最終的な穂数は同等となり、有効茎歩合は条播が高い(図2)。
  • 散播における成熟期乾物重は10×10cm区がやや大きいが、これを時期別の生産割合でみると播種密度が高いほど出穂前の乾物生産割合が高くなるが、出穂後は逆に播種密度が低い程乾物生産割合が高くなる(図3)。
  • 同じ播種密度で散播と条播の乾物生産を比較すると、生育の前半は散播が大きいが、後半には条播が追いつき、成熟期には同程度の乾物重となる(図4)。
  • 収量は散播・条播ともに播種密度100本/m2区がやや高い。構成要素の特徴としては、播種密度が高くなると穂数は増加するが1穂粒数が減少し、全籾数には明確な差がない。高密度播種では倒伏が多くなり、同一播種密度では散播は条播より倒伏程度が大きい(表2)。
  • 以上、散播は条播より分げつ発生が旺盛なので茎数確保には有利であるが、過繁茂と倒伏の危険性が高くなるので、とくに苗立数が多い時は施肥・水管理に十分留意する必要がある。

成果の活用面・留意点

  • 直播様式が異なる場合の栽培管理上の参考となる。
  • 栽植様式・播種密度に関する水稲の基本的反応は上記の通りであるが、収量・品質に及ぼす影響は品種・土壌、気象、栽培管理条件により異なるので、個別に検討を要する。

具体的データ

図1.散播における茎数の推移

図2.散播と条播における茎数の推移

図3.時期別の乾物生産割合

図4.散播と条播における乾物重の推移

表1.試験区の構成

表2.収量及び収量構成要素

その他

  • 研究課題名:環境変動に対応した水稲の生育制御技術の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成5年~9年