低アミロースの小麦中間母本「農7号」

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要約

低アミロース系統「関東107号」に化学物質EMSによる突然変異誘発処理を行い、「関東107号」よりさらにアミロース含量が低い低アミロース系統を選抜した。この系統は小麦中間母本農7号として登録された。

  • 担当:農業研究センター作物開発部小麦育種研究室
  • 連絡先:0298-38-8861
  • 部会名:作物生産
  • 専門:育種
  • 対象:麦類
  • 分類:研究

背景・ねらい

アミロース含量が製めん適性でとくに重要視されるめんの粘弾性に関係することが明かにされており、低アミロース系統「関東107号」の遺伝変異を更に拡大する目的で突然変異処理を行い、原系統「関東107号」よりさらにアミロース含量が低い系統「谷系A6099」を得た。

成果の内容・特徴

  • アミロース含量とめん適性の関係を解明するため、「関東107号」に化学物質EMSによる突然変異誘発処理を行い、M2世代に草型等で選抜した110個体についてアミロース含量を測定して、原系統「関東107号」よりさらにアミロース含量が低くなった系統「谷系A6099」を選抜した。この系統は平成7年11月小麦中間母本農7号として登録された。
  • 遺伝解析の結果、この系統の関東107号より更にアミロース含量が低い特性は、「関東107号」からの1遺伝子の変異により得られたことが明らかになった(図1)。
  • この系統のデンプあたりのアミロース含量は、「関東107号」が28.0%であるのに対し、24.2%と低く、ラピッドビスコアナライザーによる粘度特性は、最高粘度は「関東107号」と同程度に高く、ブレークダウンは「関東107号」よりさらに大きく、最終粘度はより小さい(表1、図2)。
  • この系統の叢性、株の開閉はともに中であり、稈長はやや短い。穂型は紡錘状で、ふ色は黄、芒の多少は中である。原麦粒の外観品質は中であるが、千粒重はやや小さい(表2)。
  • 播性はI~IIで、出穂期、成熟期ともに中である。収量は「農林61号」よりやや多収である。穂発芽性はやや難であり、病害抵抗性は縞萎縮病、赤さび病に対しては強であるが、うどんこ病には弱い(表2)。
  • 製麺適性は、「農林61号」と比較して色は劣るが、めんの粘弾性となめらかさが優れる(表3)。

成果の活用面・留意点

活用面:低アミロース性を利用しためん適性の解明及び低アミロース系統育成のための交配母本としての利用

留意点:粒がやや小さく、粉の色がやや劣るため、交配親として利用する場合は注意する必要がある。

具体的データ

図1.戻し交雑種子の小麦粉あたりのアミロース含量

図2.デンプンのラピッドビスコアナライザーによる粘度特性

表1.デンプンあたりのアミロース含量

 

表2.生育・収量調査成績、表3.製粉・粉質成績

 

その他

  • 研究課題名:デンプン変異系統の特性評価と遺伝様式の解明
  • 予算区分:高品質輪作、経常
  • 研究期間:平成7年度(昭和63~平成7年)