地域労働市場構造の地域性と農業生産の担い手像の地域的な違い

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要約

兼業従事者の農外における賃金構造,すなわち地域労働市場の賃金構造の地域的な違いは,東北型と近畿型とに類型化される.この労働市場の違いが,両極分化 進展型と落層的分化型といった農業構造変動の地域的な違いと,戦後自作農経営と企業的経営といった農業生産の担い手像の地域的な違いを結果としてもたらし ている。

  • 担当:農業研究センター農業計画部就業構造研究室
  • 連絡先:0298-38-8854
  • 部会名:経営
  • 専門:経営
  • 分類:研究

背景・ねらい

農家労働力が企業に在宅通勤兼業の形で吸収されていく場である地域労働市場のあり方は,兼業農家のみならず専業農家をも含めた農家労働力の自家労働評価の水準を規定し,ひいては農業構造変動の深度,性格をも規定する重要な要因の一つである。本研究では,従来の地域労働市場論の中ではきちんと位置づけられてこなかった地域労働市場の賃金構造の地域的な違いの問題に着目し,その点についての詳細な検討を行うとともに,さらにそれと農業構造の変動及び農業生産の担い手像の地域的差異との関連を明らかにした。

成果の内容・特徴

  • 80年代における地域労働市場の賃金構造の地域的な違いは,東北型地域労働市場と近畿型地域労働市場の2つの類型に整理される。両者の主な相違点は,青壮年男子の,従来の研究の中では「切り売り労賃層」と呼ばれてきた低賃金層が,前者では検出され,後者では検出し難いところにある(図1)。
  • 農家労働力の再生産のあり方に関する全国地域別データを用いた時系列的な分析によると,地域労働市場の賃金構造の東北型と近畿型の関係は発展段階差と捉えることができる。つまり今日の近畿型の姿は将来の東北型の姿を示すと考えられる。
  • 80年代に東北型地域労働市場が広範に展開しているのは東北であり,近畿型地域労働市場は近畿,南関東,東海,山陽である。それ以外の諸地域は前者から後者への移行過程にあるものと考えられる。ただし北海道,沖縄はデータ的制約からここでの分析対象からは外してある。
  • このような地域労働市場構造の地域的な違いが,両極分化進展型と落層的分化型といった農業構造変動の地域的な違いと(図2),戦後自作農経営と企業的経営といった農業生産の担い手像の地域的な違いとを結果としてもたらしている。

成果の活用面・留意点

  • 本情報は,総合農業研究叢書第27号「労働市場の地域特性と農業構造」の結論の一部をスペースの制約から論証抜きに示したものである。ここで提示している個々の概念の詳細な内容および個々の命題の詳しい論証手続きについては,同書を参照していただければ幸いである。

具体的データ

図1.地域労働市場の賃金構造

 

図2.農業構造変動の2つの型(農業センサスより)

その他

  • 研究課題名:安定経済成長局面における地域労働市場の動向と農業構造の展開論理の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(平成3~7年)