モノクローナル抗体を利用したダイズわい化ウイルスの系統類別法

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要約

伝搬アブラムシの種類が異なるダイズわい化ウイルスの2系統を類別できるモノクローナル抗体を作製した。本抗体を利用した酵素抗体法により、日本国内におけるダイズわい化ウイルス2系統の分布を明らかにした。

  • 担当:農業研究センター病害虫防除部ウイルス病診断研究室
  • 連絡先:0298-38-8931
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物病害
  • 対象:豆類
  • 分類:指導

背景・ねらい

北海道・東北地方を中心にダイズわい化病が多発し、大豆生産の大きな障害要因となっている。本病の病原であるダイズわい化ウイルスには、ジャガイモヒゲナガアブラムシで伝搬される系統とエンドウヒゲナガアブラムシで伝搬される系統が存在するが、従来の抗血清(ポリクローナル抗体)では類別できず、また罹病植物体中のウイルス濃度が極めて低いためにELISA法(酵素結合抗体法)でも検出が難しかった。そこで、両系統の血清学的類別を目的にモノクローナル抗体を作製し、正確で迅速な診断法を検討するとともに、両系統の全国的な発生分布を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ダイズわい化ウイルスのジャガイモヒゲナガアブラムシ伝搬(YS)系統にのみ反応するモノクローナル抗体を2種類、エンドウヒゲナガアブラムシ伝搬(YP)系統にのみ反応するモノクローナル抗体を2種類、両系統に反応するモノクローナル抗体を4種類作製した(表1)。
  • これらのモノクローナル抗体を用いたTAS-ELISA法による判定結果は、アブラムシ伝搬試験の結果と一致し、本法によって両系統を類別できる。
  • 本法は反応がきわめて鋭敏であり、概ね半日以内にダイズわい化ウイルスの検出と両系統の類別が可能である。
  • 国内各地におけるダイズわい化ウイルス各系統の分布状況を本法により調べた結果、北海道、青森県下ではジャガイモヒゲナガアブラムシ伝搬系統が、秋田・岩手県以南ではエンドウヒゲナガアブラムシ伝搬系統が優占的に発生していることが明らかになった(図1)。

成果の活用面・留意点

本法は、各地に発生するダイズわい化病の正確で迅速な診断及びウイルス系統類別に活用できる。試験研究用に抗体を供給できる。

具体的データ

図1.ダイズわい化ウイルス各系統の発生状況(1994年)

表1.作製したモノクローナル抗体の反応性

 

その他

  • 研究課題名:まめ類に発生する病原ウイルスの諸性質の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(平成3~7年)