ネコブセンチュウに対する天敵出芽細菌の防除効果

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要約

日本に分布する主要なネコブセンチュウ4種の防除に有効な天敵出芽細菌4系統を分離し、増殖させた。出芽細菌を線虫汚染土壌に混和し、作物を連作したところ、線虫数の減少および作物被害の軽減等の防除効果が認められた。

  • 担当:農業研究センター病害虫防除部線虫害研究室
  • 連絡先:0298-38-8839
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物虫害
  • 対象:果菜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

生態系と調和した農薬依存度の低い、新しい線虫防除技術として、天敵微生物の利用が期待されている。そこで、最も実用性の高い出芽細菌Pasteuriapenetransを、国内各地から収集して増殖させ、各種ネコブセンチュウに対する防除効果を検討した。

成果の内容・特徴

  • 日本国内各地から探索・収集した出芽細菌各分離株は、ネコブセンチュウの各種に対して明瞭な宿主特異性が認められ、サツマイモネコブセンチュウおよびジャワネコブセンチュウ寄生系統(PPMI)、アレナリアネコブセンチュウ寄生系統(PPMA)、キタネコブセンチュウ寄生系統(PPMH)の3系統に分けられた。これら3系統に対し寄生抵抗性を示すネコブセンチュウ個体群が存在したが、これに対しては、寄生性特異系統であるPPMI-2系統で対応できた(表1)。
  • 出芽細菌をネコブセンチュウ汚染土壌に混和しトマトを連作した場合、寄生性のある出芽細菌系統とネコブセンチュウの組み合わせでは、1作後ごとにネコブセンチュウへの胞子の付着数および付着率が増加し、出芽細菌の増殖が確認できた(図1(1)、(2))。一方、寄生性のない出芽細菌とネコブセンチュウの組み合わせでは、増殖が認められなかった(図1(3))。
  • 寄生性のある出芽細菌系統をネコブセンチュウ汚染土壌に混和し、ポット内でトマトを連作したところ、土壌1g当たり10万個の胞子施用では2作目から、1万個施用では3作目から顕著な線虫数の減少および被害の軽減が認められた(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 発生するネコブセンチュウの種に応じた出芽細菌系統を供給することができる。
  • 連作により出芽細菌の胞子濃度が高まれば、殺線虫剤並の防除効果が期待できる。
  • 本法により1、2作目から確実な防除効果を求める場合、殺線虫剤や耕種的防除法等との併用が必要である。

具体的データ

図1.ネコブセンチュウと出芽細菌系統の組み合わせを変えトマトを連作した時の、1作後ごとの分離幼虫に対する胞子付着数および付着率の変化

図2.サツマイモネコブセンチュウ汚染土壌に濃度別に出芽細菌(PPMI系統)を施用した時の、分離2期幼虫数(左)および防除効果(ゴール指数で表す)(右)の変化

表1.出芽細菌各系統の4種ネコブセンチュウに対する寄生性

その他

  • 研究課題名:主要穀類加害線虫の天敵微生物による防除技術の開発
  • 予算区分:一般別枠「植物免疫作用等の生物機能を活用した農産物の安全性向上技術の開発」
  • 研究期間:平成7年度(平成3~7年)