水稲不耕起栽培導入のための未攪乱土壌の窒素発現予測手法

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要約

ステンレス製採土円筒で採取した未攪乱土壌をそのまま培養瓶で湛水密栓培養し、土壌窒素発現量を反応速度論的に解析し、予測する手法を規格化した。土壌の種類によって異なるが、未攪乱条件での窒素発現量は、攪乱条件に比べて30~70%程度に減少した。

  • 担当:農業研究センター土壌肥料部土壌改良研究室
  • 連絡先:0298-38-8826
  • 部会名:生産環境
  • 専門:土壌
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

水稲の不耕起栽培は、新農政が目指す大規模水稲経営や複合経営の展開にとって、キーテクノロジーの一つとされ、水稲生産を大きく支配する土壌窒素の動態解明が待たれている。すでに確立されている耕起・代かき水田に対する土壌窒素発現予測技術は、不耕起水田のような未攪乱土壌には適用できず、不耕起栽培を導入した場合の土壌窒素発現量を予測できない。そこで、従来のような攪乱条件ではない未攪乱条件での土壌窒素発現予測手法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 未攪乱土壌の採取および培養法:圃場にステンレス製採土円筒(φ25,H50)を打ち込み、構造を維持したまま土壌を採取し、これをそのまま培養瓶(φ30,H120)に入れ、水25mLを加えて、ゴム栓で密栓し、静置培養する(図)。
  • 不耕起栽培導入のための土壌窒素発現予測には、深さ3~8cm層を対象にし、目標精度7.5%、信頼度95%を確保するための必要標本数は5~6点である(表1)。
  • 脱気操作の有無による土壌窒素発現量には有意差は認められなかった(表2)。土層内の脱気操作は土壌構造を攪乱するおそれがあるので、行わない方がよい。
  • 未攪乱培養データ(温度数段階、時系列)は、従来の攪乱培養データと同様に、反応速度論的解析法(金野ら)によって土壌窒素発現予測式を求めることができる。
  • 各地の不耕起乾田直播実証圃では、未攪乱条件における土壌窒素発現予測量(3~8cm層)は、攪乱条件に比べて少なくなる。〈未攪乱/攪乱〉の比率は土壌の種類によって大きく異なり、30~70%程度である(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 不耕起栽培を導入するにあたり、土壌からの窒素発現量の減少程度が予測できるので施肥設計の参考となる。また、耕起・代かき水田の鋤床以下(未攪乱層)からの土壌窒素発現予測にも適用できる。
  • 有機物が一様に分布していない表層土壌の未攪乱条件での窒素発現予測には、目標精度を10%に落としても、20点程度の標本数が必要である。

具体的データ

図1.未攪乱土壌の培養法

表1.未攪乱土壌の必要標本数

表2.窒素発現量に対する培養条件の影響

表3.各種土壌の窒素発現予測量

 

その他

  • 研究課題名:沖積土汎用水田における不耕起栽培のための土壌管理技術の確立
  • 予算区分:総合的開発研究(高品質輪作)
  • 研究期間:平成7年度(平成6年~7年)