稲わら施用による非作付期水田の窒素浄化機能の強化

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要約

水稲収穫後、水田に稲わらを表面施用し、全窒素濃度約6mgL-1の畑地湧水を連続潅漑したところ、10月から12月の間は、稲わら施用水田の窒素除去速度は、無施用水田のほぼ2倍となり、稲わら施用により水田の窒素浄化機能を強化できた。

  • 担当:農業研究センター土壌肥料部水質保全研究室
  • 連絡先:0298-38-8829
  • 部会名:生産環境
  • 専門:環境保全
  • 分類:研究

背景・ねらい

OECDの農業委員会と環境政策委員会の合同作業部会では、農業にも汚染者負担の原則を適用することを検討しており、すでに、ヨーロッパ諸国の中には肥料課徴金や農薬課徴金等の環境税を実施している国もある。一方、我国でも水道水源の水質保全を図るため、平成6年5月から水道水源二法が施行され、農業生産の場でも、一層の環境保全対策の推進が求められている。このため、本研究では、畑地-水田連鎖系内の水田の窒素浄化機能を強化するため、稲わら施用法を調査・検討し、水田の水質浄化機能を有効に活用した環境保全的な土地利用計画策定のための基礎データを得る。

成果の内容・特徴

  • 稲わら無施用区の浸透水の全窒素濃度は、地温が10°C以下になった12月下旬から急激に高くなり、2月下旬に最高値22mgL-1に達したが、4月上旬から地温の上昇に伴い低下し、5月末には1mgL-1以下となった(図1)。
  • 稲わら表面施用区の浸透水の全窒素濃度は、同様に、1月中旬からやや高くなり、2月下旬には最高値4.8mgL-1に達した後、4月に入ると再び1mgL-1以下に低下した(図1)。
  • 非作付期の水田の平均窒素除去速度は、稲わら無施用区0.142g・m-2・d-1に対し、表面施用区では0.209g・m-2・d-1となった(表1)。
  • 水稲収穫後、畑地-水田連鎖系内の谷津田に稲わらを表面施用し、硝酸態窒素を主体とした全窒素濃度約6mgL-1の畑地湧水を連続供給したところ、10月から12月の間は、稲わら施用区の流出水の全窒素濃度は、無施用区に比べ顕著に低下した。また、この間の稲わら施用区の平均窒素除去速度は、無施用区のほぼ2倍となった(図2、表2)。
  • 上記3ヶ月間の水田1ha当たりの積算窒素除去量は、稲わら施用区が約160kg、無施用区が約86kgとなり、稲わら施用により水田の窒素浄化機能を強化できた(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 畑地-水田連鎖系内の硝酸態窒素を高濃度に含む畑地湧水潅漑水田は、適切に管理すれば、相当高い窒素浄化機能を発揮するので、農業地域の水質改善を図るため休耕田を含めたこれら水田の活用法を調査・検討する必要がある。
  • 稲わらの表面施用区より鋤込み区の方が窒素浄化機能が高く、また、硝酸態窒素濃度の高い潅漑水を供給すると、水田田面が酸化的に維持され、水田からのメタン発生を抑制できる。

具体的データ

図1.稲わら施用法が浸透水の全窒素濃度に及ぼす影響

図2.稲わらの表面施用が水田流出水の可溶性全窒素濃度に及ぼす影響

 

表1.稲わら施用が非作付期水田の硝酸態窒素浄化機能に及ぼす影響

 

表2.稲わらの表面施用が水田の窒素浄化機能に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:水田生態系を利用した水質浄化技術の開発
  • 予算区分:経常・公害防止(浅層地下水)ほか
  • 研究期間:平成7年度(平成3~7年)