分子マーカーを用いた稲幼植物の低温枯死抵抗性に関する遺伝子座の推定

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要約

インド型品種を育種素材として用いた場合、幼植物の低温黄化・枯死が問題となる 。RFLP(制限酵素断片長多型)マーカー利用による解析により、低温枯死抵抗性の 遺伝子座が、第1、3、11染色体上に存在すると推定した。

  • 担当:北陸農業試験場・作物開発部・育種法研究室
  • 連絡先:0255-26-3238
  • 部会名:作物生産
  • 専門:バイテク
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

低温ストレス下での出芽苗立ちは、後の生育や収量に大きく影響する重要な形質の一つである。外国稲等の育種素材を利用した効率的な育種を進めるためには、この形質の品種間差ならびに遺伝様式を明らかにすることは不可欠である。低温ストレスによる幼苗の枯死ならびに黄化現象に関する従来の遺伝解析から、少数の主働遺伝子支配であることが明らかになっている。近年イネにおいても種々の有用形質の遺伝解析の道具として利用されてきているRFLP等の分子マーカーを利用し、この形質に関与する染色体領域を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • インド型品種「密陽23号」と日本型品種「アキヒカリ」とのF2集団におけるRFLPデータの蓄積とそれに基づいて作成されたRFLP連鎖地図を用いてF3系統群の幼苗期の低温枯死抵抗性について解析する。
  • 2葉期における調査では低温枯死抵抗性に関与する染色体領域が、既知の第1、3染色体に加えて第11染色体上に2ヶ所あらたに検出される。
  • 6葉期における調査では低温枯死抵抗性に関与する染色体領域が第1、2、3、6、9、11、12染色体上に検出される。
  • 以上より、2葉期および6葉期において共通に検出された第1、3、11染色体上の領域には作用力の大きな遺伝子座の存在が推定される。
  • 6葉期における低温処理では上記3染色体以外に4つの染色体で該当する領域が検出され、葉齢の進んだ段階では低温枯死抵抗性に関与する遺伝子座数の増加が示唆される。

成果の活用面・留意点

  • より詳細な解析を行うためには、低温枯死抵抗性に関与する各部分だけを取り込んだ同質遺伝子系統の作出が必要であり、これらの領域内のマーカーはその選抜指標として利用できる。
  • イネゲノム全域にわたるRFLP分析を行ったが、第5、6染色体の一部等でRFLPの多型が検出できない領域があり、これら領域については未解明である。
  • 他の多くの組み合わせを用いて、これら以外の低温枯死抵抗性の領域を新たに検出する必要がある。
  • 今後は低温黄化を検出できる温度・光条件についても検討する必要がある。

具体的データ

図1.密養23号/アキヒカリのF2における低温枯死抵抗性にQTL解析

 

図2.RFLPマーカーXNpb257(chr.11)の遺伝子型別の系統群間における低温枯死率の差異

 

その他

  • 研究課題名:分子遺伝学的手法による直播適性の遺伝様式の解明
  • 予算区分:総合的開発(次世代稲作)
  • 研究期間:平成7年度(平成7年~9年)
  • 発表論文等:分子マーカーを用いた遺伝・育種学的研究3.幼植物の低温枯死抵抗性育雑45巻別2号、175、1995.