中山間地における耕作放棄水田の降雨流出特性

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要約

北陸地域の中山間地における耕作放棄水田の降雨流出特性は、耕作放棄水田の地下水 位が高い湿潤状態であれば、総流出量、ピーク流出量は耕作水田を上まわるが、地下 水位の低い乾燥状態では、この関係が逆転する。

  • 担当:北陸農業試験場・地域基盤研究部・農村整備研究室
  • 連絡先:0255-26-3233
  • 部会名:営農・作業技術、農業工学
  • 専門:農地整備
  • 対象:農業工学
  • 分類:行政

背景・ねらい

中山間地における水田の洪水防止等の公益的機能を評価する。北陸地域の中山間地に調査圃場を設定して流出観測を行い、水田の耕作放棄が降雨流出に及ぼす影響について検討する。

成果の内容・特徴

新潟県東頚城郡松代町において、耕作放棄水田(面積12.0a)と耕作水田(面積12.3a)における流入・流出量の観測を行い、以下のような降雨流出特性が得られた。

  • 図1に地下水位が高く湿潤状態にある耕作放棄水田と耕作水田の雨水保留量曲線を示す。耕作水田の保留量は水田の標準的な値30~50mmに近いが、耕作放棄水田の保留量は20mm程度と小さい。図2は平成5年8月に得られた両水田の代表的な流出ハイドログラフ(総雨量61.5mm)で、耕作放棄水田は耕作水田より総流出量、ピーク流出量ともに大きい。
  • 図3は地下水位が低く乾燥状態にある耕作放棄水田と耕作水田の雨水保留量曲線である。耕作放棄水田の保留量は湿潤状態のときに比べて飛躍的に増大し50mm程度となる。耕作水田の保留量は図1より低下しているが、これは上流の耕作水田に繋がる法面が崩壊したためである。図4は平成7年7月に得られた両水田の代表的な流出ハイドログラフ(総雨量104.0mm)で、耕作放棄水田は耕作水田より総流出量、ピーク流出量ともに小さくなっている。
  • 耕作放棄水田の降雨流出特性は圃場の乾湿状態で大きく異なる。すなわち、耕作放棄水田は、湿潤状態では下層への浸透が抑制され、表面の水みち流れが卓越して流出量の増大を招くが、乾燥状態では発達した亀裂が下層への浸透を促し、表面流出を減少させることになる。なお、耕作放棄水田の乾燥による地下浸透の増加は、北陸地域の中山間地では地すべりの誘因となる可能性もある。

成果の活用面・留意点

  • 中山間地の農地保全計画等に活用することができる。ただし、周辺地形や土壌が流出に大きな影響を与えるため、条件が異なる耕作放棄水田についても調査することが望ましい。
  • 耕作放棄水田は、平成5年の観測開始時点で放棄後4年が経過している。
  • 平成6年は灌漑期の総降雨量が100年確率を超える渇水年である。

具体的データ

図1.湿潤状態の耕作放棄水田と耕作水田の雨水保留量曲線(平成5年8月~6年7月) 図2.ハイドログラフ(平成5年8月)

 

図3.乾燥状態の耕作放棄水田と耕作水田の雨水保留量曲線(平成6年8月~7年11月) 図4.ハイドログラフ(平成7年7月)

 

その他

  • 研究課題名:中山間地における水田耕作放棄の流出への影響とその評価
  • 予算区分:依頼
  • 研究期間:平成7年度(平成5年~7年)
  • 発表論文等:
    耕作放棄に伴う流出量の変化、農土学会大会講演要旨、1994.
    異常渇水に伴う流出量の変化、農土学会大会講演要旨、1995.
    耕作放棄水田の地下水位と流出量の関係、農土学会大会講演要旨、1996.