雄性不稔稲サイレージの栄養価

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要約

正常稲(糊熟期)と同一時期に調製した雄性不稔稲サイレージの発酵品質は正常稲サ イレージと明瞭な差はない。また、雄性不稔稲サイレージは正常稲サイレージに比べ、 可消化養分総量が低く、可消化粗蛋白質が高い。

  • 担当:北陸農業試験場・水田利用部・家畜飼養研究室
  • 連絡先:0257-22-6118
  • 部会名:畜産
  • 専門:動物栄養
  • 対象:家畜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

稲の飼料利用は粗飼料の自給率の向上を図るばかりではなく、水田機能の保全の意味からも有効な方法のひとつである。近年、ラップサイレージの普及が急速に進んでいることや今後の稲の多様な活用形態を模索するうえで、茎葉部を主体とした稲について栄養価を検討することは有意義である。そこで、茎葉部主体型の稲として雄性不稔稲を用い、その栄養価を明らかにした。

成果の内容・特徴

正常稲の糊熟期に合わせて刈取った雄性不稔稲サイレージは正常稲サイレージに比べ、以下の特徴があった

  • 雄性不稔稲サイレージは、正常稲サイレージよりエネルギー含有率が低く、細胞壁の有機物部分と酸性デタージェント繊維含有率が高い(表1)。
  • 雄性不稔稲、正常稲サイレージのpHは4.45-4.96の範囲にあり、乳酸濃度、酪酸濃度、酢酸濃度及び総窒素に占める揮発性塩基態窒素の割合(VBN/T-N)には雄性不稔稲と正常稲サイレージの間で明瞭な差は認められない(表2)。
  • 雄性不稔稲サイレージでは正常稲サイレージに比べ、乾物とエネルギーの消化率が低く、逆に粗蛋白質の消化率が高い。また、雄性不稔稲サイレージの可消化養分総量、可消化エネルギー及び代謝エネルギーは、平均で正常稲サイレージの85-95%であり、可消化粗蛋白質は132%である(表3)。
  • 雄性不稔稲サイレージの単位面積当たりのTDN収量は、平均で正常稲サイレージの71(63~86%)である(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 雄性不稔稲の飼料特性が明らかとなり、稲の飼料化のための基礎知見となる。
  • 刈取り適期や冷害で不稔となった稲の栄養価についての検討が必要である。

具体的データ

表1.雄性不稔稲の収量とサイレージの試料成分

 

表2.雄性不稔稲サイレージの発光品質

 

表3.雄性不稔稲サイレージの消化率、栄養価およびTDN収量

 

その他

  • 研究課題名:稲青刈りサイレージの調製・利用技術の確立
  • 予算区分:総合的開発(高品質輪作)
  • 研究期間:平成7年度(平成6~7年)
  • 発表論文等:雄性不稔が稲茎葉部の化学成分とinvitro乾物消化率に及ぼす影響、GrasslandScience,41巻1号,1995.