不耕起栽培による夏作物の初期生育促進効果
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
火山灰土壌畑では不耕起により夏作物の初期生育が促進され、その時期は、出芽後の積算温度が約200~350℃の期間である。初期生育促進の要因は、不耕起にともなう土壌表層の環境の変化によって、作物のが表層で促進され、養水分の吸収能が向上するためと判断された。
- 担当:農業研究センター 耕地利用部 作付体系研究室
- 連絡先:0298-38-8504
- 部会名:作物生産
- 専門:栽培
- 対象:豆類 雑穀類
- 分類:研究
背景・ねらい
不耕起、簡易耕起を継続した火山灰土壌畑で、これまで大豆、トウモロコシ、陸稲、落花生等の作物において初期生育が促進される現象が認められてきた。そこで、不耕起による夏作物の初期生育促進効果の出現時期とその要因について、土壌養分、土壌水分の変化に注目して検討した。
成果の内容・特徴
- 不耕起の大豆、トウモロコシの相対生長率(RGR)がロータリ耕を上回るのは、出芽後の積算温度が約200~350℃の期間であり、これは播種時期を変え、気温、地温を異にした条件でも一定である。なお、この時期の大豆とトウモロコシの生育ステージは、それぞれ初生葉展開後から第3葉展開期、第3葉展開後から第5葉展開期にあたる(表1)。
- 施肥の有無に関わらず不耕起でトウモロコシの初期生育が促進される。また、播種前とトウモロコシ生育初期の、土壌中の可吸態リン酸と無機態窒素の量とその分布には、耕起法による差はほとんど認められない(表2、表3)。
- 黒色ポリマルチによって土壌表面からの水分蒸発を抑制し、土壌水分を高く保つ処理を行っても、不耕起とロータリ耕の初期生育の差は縮小しない。また、生育初期における土壌の水分張力(10cm深)には、不耕起とロータリ耕の間に大きな差は認められない(表2、図1)。
- 不耕起の大豆の不定根は、ロータリ耕に比べて側根の発達が旺盛で、伸長角度が水平面に対して小さくなる傾向が認められる(表4)。
- 以上のことから、不耕起にともなう土壌養分、土壌水分の変化を初期生育促進の直接的要因とするのは困難であった。しかしながら、不耕起では土壌表層の根系発達が旺盛であり、このことが養水分の吸収能力を高め、初期生育を促進したものと推察された。
成果の活用面・留意点
- 不耕起に関しての研究成果は、これまで、不耕起における畑作物の生産力の推移(平成元年度、研究成果情報、総合農業)、不耕起による陸稲の干害軽減効果(平成4年度、研究成果情報、総合農業)について報告した。本成果はこれらとあわせて、不耕起栽培技術の確立に寄与するものである。
- 火山灰以外の土壌については別途検討を必要とする。
具体的データ




その他
- 研究課題名:不耕起栽培による畑作物の初期生育促進効果の解明
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成7年度(平成5~7年度)