除草剤ピラゾスルフロンエチルに対する耐性の稲の品種間差異とその薬害軽減

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要約

水耕栽培および圃場試験において除草剤ピラゾスルフロンエチルに対する耐性に稲品種間差異が存在する。また除草剤ジメピペレートの同時施用により本剤による稲の生育抑制は、軽減される。

  • 担当:農研センター 耕地利用部 除草剤研究室
  • 連絡先:0298-38-8426
  • 部会名:作物生産
  • 専門:雑草
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

選択性除草剤は、作物栽培における雑草防除に不可欠であり、その低成分・高活性化や低毒化が進んできている。一方、低成分・高活性剤のスルホニルウレア系除草剤において、対象作物の耐性の品種間差異や、極端な漏水田・砂質土壌など栽培条件による薬害発生事例が知られている。そこで近年広範囲で使用されている国産水稲用の同系除草剤ピラゾスルフロンエチルに対し、稲に対する安全性を品種間差異の観点から把握するとともに、同系水稲用除草剤ベンスルフロンメチルとの混用で薬害軽減効果を持つ除草剤ジメピペレートを、ピラゾスルフロンエチルと混用した場合の薬害軽減の有効性を確認する。

成果の内容・特徴

  • 水耕栽培試験において、ピラゾスルフロンエチルの稚苗稲に対する耐性は品種間で大きく異なり、特にインド型稲に耐性の大きい品種が多い(表1)。
  • ピラゾスルフロンエチル粒剤(商品名:シリウス、0.07%)を通常使用量の2倍量処理した場合、水田条件で稚苗を移植した稲品種(水耕栽培と同じ、表1参照)の初期生育に対する影響の品種間差異も水耕栽培と同様の傾向である(図1)。
  • 従って、ピラゾスルフロンエチルに対する耐性に関し、稲は明らかに品種間差異を有する。
  • 一方、「亀の尾4号」および「IR-8」を用いた水耕栽培において、ピラゾスルフロンエチルの稲に対する生育抑制は、ベンスルフロンメチルと同様、ジメピペレートにより軽減される(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 現在栽培されている稲の品種における本剤に対する耐性の把握方法としての利用や除草剤の混合剤開発のための基礎的情報となる。
  • 本剤に対して耐性の強かった稲品種の薬剤耐性発現機構およびジメピペレートによる薬害軽減の作用機構の解明のための基礎的情報となる。

具体的データ

図1.圃場試験におけるピラゾスルフロンエチルに対する耐性の稲の品種間差異

 

表1.水耕栽培におけるピラゾスルフロンエチルに対する耐性の稲の品種間差異 表2.水耕栽培におけるスルホニルウレア系除草剤などの稲の第2葉身伸長抑制作用に対するジメピペレート添加効果

その他

  • 研究課題名:低薬量高活性型除草剤の選択作用機構の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平7年度(平4~7年度)