登熟温度が小麦澱粉の特性および構造に及ぼす影響

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要約

登熟温度を変えて生育させた小麦澱粉の糊化特性と化学構造の相互の関係について解析し、登熟温度が低い場合にアミロペクチンの側鎖の短いものが多くなり、糊化温度が低く、糊化時の吸熱エネルギー量も小さくなることを明らかにした。

  • 担当:農業研究センター 作物生理品質部 流通利用研究室
  • 連絡先:0298-38-8868
  • 部会名:作物生産
  • 専門:育種 加工利用
  • 対象:小麦
  • 分類:研究

背景・ねらい

澱粉は小麦の胚乳の主要成分であり、小麦粉生地及び小麦製品の物理化学的特性に大きな影響を与えている。アミロペクチンの化学構造、すなわち側鎖長、分岐密度、分子サイズなどは、澱粉の物理化学的特性と関連があると言われている。本研究では、登熟温度を変えて生育させた小麦について澱粉の糊化特性とアミロペクチンの側鎖長分布を測定し、澱粉の化学構造と糊化特性との関連を解明することを目的とした。

成果の内容・特徴

  • 15/10、20/15、25/20、30/25°C(明14時間/暗10時間)の条件下で登熟させた試料から調製した澱粉の糊化温度は、登熟温度と相関が高く、登熟温度が高いほど糊化温度も高くなる。また、糊化時の吸熱エネルギー量も登熟温度が高いほど大きな値を示す。アミロース含量は登熟温度と相関はあるが、その変異は小さく、変動幅は1から2%以内である(表1)。検討した品種(農林3号、農林29号、ハルヒカリ、ハルユタカ)においてはこれらの特性値の品種間差異は認められない。
  • アミロペクチン側鎖に由来するグルコース重合体のピーク面積比の主成分分析の結果、第1、第2主成分の寄与率はそれぞれ47.9%、23.5%であり、第2主成分まででもとの変動の71.4%が説明できる(図1)。グルコース重合体のピーク面積と第1、第2主成分との関係を見ると、重合度(DP)で6から12までのものがまとまった挙動を示すことがわかる(図2)。即ち、重合度が6から12及び13から34のものの各ピーク面積比の和(DP6-12、DP13-34)と、登熟温度や各特性値との相関を見ると、DP6-12は、登熟温度、糊化温度、糊化時の吸熱エネルギー量と高い負相関がある。また、DP13-34は、これらと強い正相関がある。アミロース含量とDP6-12、DP13-34との間の相関は低い(表2)。
  • 以上の結果より、登熟温度が低い場合にアミロペクチンの側鎖の短いものが多くなり、また糊化温度が低く、糊化時の吸熱エネルギー量も小さくなることが判明した。糊化特性から見ると、登熟温度が低くなると澱粉の結晶化の程度が小さくなることが考えられる。

成果の活用面・留意点

アミロペクチン側鎖の分岐密度や分子サイズと糊化特性の関係について解析する必要がある。

具体的データ

表1.登熟温度による糊化特性の変化表2.各特性間の相関

 

図1.登熟温度の異なる試料の主成分スコアのプロット図2.第1,第2主成分と各鎖長ピーク面積比との相関

 

 

その他

  • 研究課題名:糊化特性に及ぼす澱粉構造の影響の解明
  • 予算区分:高品質輪作
  • 研究期間:平成6年度(平成6年~8年)