野菜の品目別産地対応における留意点

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要約

卸売市場における野菜価格の変動を季節間変動と市場間変動に分け,それらの変動が季節間,市場間の野菜品目別供給の変動によってもたらされるものとし,そ れぞれの大きさの違いから野菜品目を分け,各品目グループ毎に安定的に高収益を上げていくために品目別野菜産地が留意すべき点を示した。

  • 担当:農業研究センター 農業計画部 市場適応研究室
  • 連絡先:0298-38-8851
  • 部会名:経営
  • 専門:経営
  • 分類:指導

背景・ねらい

最近においては消費ニーズの変化,産地への動き等,消費構造・流通構造の変化が顕著であり,他方生産基盤についてみれば,労働力不足・高齢化による生産基盤の脆弱化が進展するなど,野菜需給の不安定性要因が拡大する傾向にある。このような状況のもとでは野菜産地が消費構造の変化を捉らえそれに速やかに対応していくことが望まれる。ここでは価格変動を季節間変動と市場間変動に分けて分析することで,供給量水準の変動の状況を品目毎に推定し,それによって得られる情報をもとに野菜産地の今後の生産・出荷対応における留意点を提示する。

成果の内容・特徴

市場間,季節間(正確には旬間)の価格の変動係数の大きさで,品目別野菜の供給量の市場間,季節間のバラツキ度合いを推定できるので,そのことから産地対応における次のような留意点が指摘できる。

  • 図のIのグループの野菜は市場間,季節間の変動係数がともに小さくなってきているので,周年供給と市場分荷の合理化が進んでいる品目と推測され,これらの品目ではもはや生産時期の変更の方向での技術開発と資本投資,および高価格の市場への出荷先変更などの対応は効果が小さい品目と判断される。これら品目の産地では生産費および出荷経費の節減等の合理化を図り,産地競争力を増強していくことのみが効果的な方策となり得よう。
  • IIのグループの野菜では,Iのグループでの対応の他に季節間の変動係数がまだ大きいので,端境期出荷をねらった生産を図ることが効果的な対応として残されている。この方向での技術開発と資本投下によってまだ高収益を得る余地が残されている野菜品目と考えられよう。
  • IVのグループの品目はIのグループでの対応の他に市場間変動係数が大きいので,価格の高い市場出荷をねらった生産・出荷が効果的な対応として残されているといえよう。
  • IIIのグループの野菜は市場間,季節間変動係数ともに大きいので,Iのグループでの対応の他に,端境期出荷をねらうための生産時期変更の方向での技術開発と資本投資,および高価格の市場への出荷先変更などを図るという分荷対応の方向がともに残されている。
  • 周年供給化および市場分荷の合理化は益々進展していくと考えられるので,市場間,季節間の変動係数がともに小さくなり,現在はII,III,IVの各グループに分類されている品目の多くは,将来Iのグループに変っていくものと思われる。

成果の活用面・留意点

分析に用いた資料(農水省「青果物流通統計旬報」)の関係で,たまねぎ以外は輸入ものが含まれた分析となっており,また市場外流通のものは含まれていない。

具体的データ

図1.品目別産地対応方向の区分

その他

  • 研究課題名:野菜消費構造の変化に伴う産地対応の解明
  • 予算区分:特別研究「野菜需給」
  • 研究期間:平成7年度(平成5~7年)