野菜供給安定事業のレタス生産に及ぼす効果

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要約

作付面積が拡大している場合、野菜供給安定基金の交付金がレタス作付面積に及ぼす影響が大きく、香川県では作付面積の約2%を増加させた。交付金は、作付面積増加局面では生産農家の投資を安定させ、さらなる面積増加を導く。

  • 担当:農業研究センター 経営管理部 経営設計研究室
  • 連絡先:0298-38-8414
  • 部会名:経営
  • 専門:経営
  • 対象:野菜
  • 分類:行政

背景・ねらい

野菜作の健全な発展と、消費に関する国民生活の安定に資するため、30年にわたり野菜供給安定事業が実施されてきた。
この施策に関して、その効果が明らかになっていない。
ここでは、冬期に価格高騰が問題となることの多いレタスを対象に、需給モデルを用い、野菜供給安定事業の定量的評価を行う。
評価に際し、同事業が生産者の作付面積に及ぼす影響のみを考慮した。

成果の内容・特徴

  • 冬レタス4産地(茨城県、静岡県、香川県、他県)、夏秋レタス2産地(長野県、他県)を対象に含む、レタスの需給モデルを開発した。
    フローチャートを図1に示す。なお、データの期種は年次であり、計測期間は1977年より1994年である。データはすべて4月より翌年3月までのレタス出荷年度に集計してある。
  • 冬レタスの産地である香川県では、野菜供給安定事業の交付金の作付面積等への影響は顕著であった。これは、同県が野菜供給安定基金を図2に示すように積極的に活用していることに加え、作付面積に対する収益の影響が他県に比べて大きいためである。最も多く交付金が支給されている年は1986年であり、10a当たり12万3千円であった(粗収益の44%)。
  • 図3に、香川県の作付面積のシミュレーション結果を示した。その差は、最も増加した年において17haであり、全作付面積に対して約2%である。
  • 作付面積が増加する局面では、交付金は、作付面積のさらなる拡大を導いた。これは、野菜供給安定基金による、レタス生産農家の安定した投資の継続の結果と考えられる。
  • 作付面積が減少する局面では、交付金は、作付面積のさらなる縮小を導いた。
  • の結果を併せて考えると、交付金は、レタス生産農家の作付面積に対する拡大あるいは縮小に対する意向を実際の作付面積に強く反映させる効果があると言えよう。

成果の活用面・留意点

  • ここに示したモデルは、産地廃棄による供給量削減の効果を分析することも可能である。また、輸入量の増大や、消費支出、キャベツ、きゅうりの小売価格の増減の需要量等に及ぼす影響も評価できる。
  • 本モデルでは、県単独の供給安定対策事業を対象に含んでいない。長野県等では野菜供給安定基金の造成の際に、経済連が出資する金額が非常に大きくなるため、県の独自の事業の金額の比率を高くしている。これらの県では、野菜供給安定事業と県単独の事業の生産に及ぼす効果を合わせた場合、ここで行ったシミュレーション結果よりさらに大きな効果を示すと考えられる。

具体的データ

図1.レタスモデルのフローチャート

 

図2.香川県の10a当たり粗収益と交付金

 

 

図3.香川県の作付面積

 

その他

  • 研究課題名:品質別需要分析モデルの開発と需給安定施策の評価
  • 予算区分:特研(野菜需給変動)
  • 研究期間:平成7年度(平成6~7年)