ファジィ集合を利用した米の収量予測

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要約

行政区分をファジィ集合と考えることにより、重回帰を用いた米の収量予測 の信頼性を向上させる方法を開発した。この方法は、気象や収量などのデータ をより有効に利用するために役立つ。

  • 担当:北陸農業試験場 企画連絡室 研究技術情報科
  • 連絡先:0255-26-3214
  • 部会名:情報研究
  • 専門:農業気象
  • 対象:稲類
  • 分類:行政

背景・ねらい

気象データを用いたコメの収量予測を行うための回帰式の予測精度を向上させる手法が求められている。そこで、ある地点での観測値が有効性を持つ領域は都道府県の境界の中だけに止まるわけではなく、近隣の都道府県にもファジィに広がっているという考えを利用して限られたデータを有用に利用する回帰手法を開発した。

成果の内容・特徴

この方法を用いて福島県における米の生産量を予測する重回帰式を求めた例を示す。

入力変数として用いた気象データは、福島県と茨城県の7,8,9月の月平均気温である(図1)。出力変数として用いた米の生産量のデータは、農林水産省が発表した10a(=1,000m2)あたりの米の生産量(kg)である。

このデータを用い、次の3つの方法で米の生産量を予測するための重回帰式を求めた。

(A)福島県のデータだけを用いた重回帰式

(B)福島県と茨城県を一つの地域と見なした重回帰式

(C)福島県、茨城県という地域はファジィな広がりを持つと考えて、福島県における収量を予測する重回帰式

 

以下のように定義されるCV(Cross-Validation、CVの平方根が予測誤差と見なされる。)を用いて3つの方法で得られた式の有効性を比較した。

 

CV=Σ(Yi-Yi(i))2/N(Nはデータの数、ここでは14)

i

ここで、Yi(i)はi番目のデータを用いずに回帰式を計算し、得られた回帰式を用いて推定したYiの値である。方法(c)を用いたときの観測値と予測値(Yi(i))を図2に示した。3つの方法で得られたCV(図3)から、方法(c)が最もよい結果を与えていることが分かった。

成果の活用面・留意点

この方法は米の収量予測への利用においては、気温の長期予報が可能であることが前提である。また、北海道のような短期間の冷害が米の収量に大きな意味を持つ地域では利用できない。気象条件の観測点の数や米の品種についての取り扱いによっても結果の有用性が異なる。

この計算のためのBASICのプログラムは、職務作成プログラムとして登録申請済み。

具体的データ

図1.福島県における月平均気温

 

図2.ファジィ集合を用いて得られた予測値と実測値

 

図3.3つの方法の予測誤差の比較

その他

  • 研究課題名:地域農業に関する研究技術情報の調査分析
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(平成6年~8年度)