発病抑止型土壌の利用によるキャベツ根こぶ病の減農薬防除

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要約

群馬県嬬恋村キャベツ産地では,土壌の腐植含量と根こぶ病の発病に高い相関がある。腐植含量5%未満の淡色黒ボク土主体の圃場は発病抑止型で,大幅な 減農薬防除が可能である。腐植含量10%以上の発病助長型の圃場でも育苗時の培 土に発病抑止型土壌を使用することで定植後の発病を軽減できる。

  • 担当:農業研究センター プロジェクト研究第2チーム
  • 連絡先:0298-38-8840
  • 部会名:総合研究
  • 専門:土壌
  • 対象:キャベツ
  • 分類:指導

背景・ねらい

キャベツ根こぶ病等の土壌病害は地上部病徴が認められるまでに日数を要し,また発病確認後の防除対策には限界があるため,予防を含めて防除農薬を過剰に投与する傾向がある。
そこで,群馬県嬬恋村キャベツ産地に分布する貴重な土壌資源である発病抑止型土壌の有効利用による減農薬防除の可能性を検討する。

成果の内容・特徴

  • 群馬県嬬恋村キャベツ産地に分布する耕地土壌は腐植含量を指標にして類型化できる(図1)。
  • 根こぶ病抑止型の下層土が表土化した土壌腐植含量が5%未満(淡色黒ボク土造成相)の圃場は発病抑止性が高いため,減農薬防除が可能な地帯に類型化され,防除農薬施用量の半減が可能である。腐植含量が10%以上(多腐植質黒ボク土造成相)の圃場は発病助長型であるため,病原菌による汚染が著しい場合にはPCNB剤による防除効果は小さい。腐植含量5~10%(腐植質黒ボク土造成相)の圃場は中間的な地帯として類型化される(図1、表1)。
  • 発病抑止型土壌(下層土)をセル成型育苗用培土として利用したキャベツ苗を培土を付けて発病助長型の現地汚染畑に定植したところ,慣行法に比較して発病度が35%低下し,地上部生重は25%増収した(図2-1、2-2)。
  • これらのことから,群馬県嬬恋村キャベツ産地では,淡色黒ボク土である下層土の根こぶ病抑止機能を活用することによって,防除農薬施用量の大幅な削減が可能である。

成果の活用面・留意点

  • 本研究では群馬県嬬恋村キャベツ産地以外の地域を対象にした試験を実施していないので,指導の対象は群馬県嬬恋村産地に限定される。
  • リモートセンシングによる土壌腐植含量の広域診断手法を活用することで広域的な減農薬防除対策が可能になる。
  • セル成型育苗用培土への発病抑止型土壌の利用に当たっては,発芽・初期生育の斉一化および供試用土の少量化などの工夫が必要である。

具体的データ

図1.腐植含量を根こぶ病発病とPCNB剤の防除効果の指標とした土壌の類型化

 

図2-1.定植時の模式図。図2-2.育苗土の種類と農家汚染圃場への定植後の発病

 

表1.発病抑止型土壌の農家圃場における減農薬試験

その他

  • 研究課題名:土壌病害抑止要因の解明による産地診断システムの開発
  • 予算区分:総合的開発(高収益畑作)・経常
  • 研究期間:平成7年度(平成4~6年;7年)