環境影響評価と経済性シミュレーション用の農業技術体系データベース・システム
要約
従来の農業技術体系データベース・システムの機能を強化した新システムである。Web上の簡便な操作で財務指標の算出、環境影響評価、経営モデル間の比較ができる。さらに、計算結果を共有するメンバーの指定、独自の技術体系データを用いた計算ができる。
- キーワード:農業技術体系データベース・システムFSDB、環境影響評価、経営シミュレーション、技術評価、営農計画
- 担当:中央農研・生産支援システム研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-8975
- 区分:共通基盤・情報研究
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
農業技術体系データベース・システム(FSDB:Farming-systems Database)は、Webインターフェースによる簡便な操作により、農業技術体系について財務指標等の営農指標群を算出し営農計画を支援することができる。しかし、Web上では体系間の比較分析が実施できないことや、利用者が技術体系データを公開する範囲の設定やデータの登録を独自に実施できないなどの課題があった。また農業分野における環境配慮の取り組みを支援するためには、環境影響評価を容易に実施できる環境を提供することが望まれている。以上の課題を克服する情報システムを開発する。
成果の内容・特徴
- 本システムは、従来のFSDBを大幅に機能強化した新システムである。登録された農業技術体系データを用いてWeb上での技術体系選択と作付け面積入力という簡易な操作により経営シミュレーションを実行することができる(図1)。利用者はインターネット接続環境があれば自由にアクセスすることができる。
- 経営シミュレーションでは3種類のサービスが提供される(表1)。農業経営シミュレーションでは、従来から提供されている営農指標群の算出に加えて、温室効果ガス排出量の推計が可能である。経営間比較サービスでは、農業経営シミュレーションの結果を二つの経営モデル間で比較分析することができる。農薬使用の環境リスクスコア推定サービスでは、農薬使用の生態系への潜在的悪影響の程度を相対評価することができる(平成18年度共通基盤研究成果情報)。これらの環境指標を経済性指標と関連づけて技術体系や経営を総合的に評価することが可能である。
- データ管理は、本システムの利用を希望する組織の管理者が、独自に実施することができる。管理内容は表2のとおりである。
- 組織のデータ管理者がデータの公開区分を「公開」とした場合にのみ、登録された技術体系データは組織外から利用できる。それらの公開データは、一般のインターネット利用者が経営シミュレーション、環境影響評価を実施する場合に利用できる。
成果の活用面・留意点
具体的データ



その他
- 研究課題名:生産・流通IT化のための農業技術体系データベース及び意思決定支援システムの開発
- 中課題整理番号:222b
- 予算区分:基盤、実用技術
- 研究期間:2006~2010年度
- 研究担当者:佐藤正衛、菅原幸治、南石晃明(九州大農)、亀屋隆志(横浜国大環情)、本田茂広(MSS(株))
- 発表論文等:1)佐藤ら(2007)農業情報研究、16(1):22-32
2)南石ら(2007)農業情報研究、16(2):66-80
3)佐藤ら(2011)環境科学会誌、24(1):35-48