米の新貯蔵調質技術の開発-精白米の調製、貯蔵技術-

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要約

白米は籾、玄米と比較して品質劣化が早いため、白米での長期貯蔵は行われていない。
しかし、糖層の剥離をソフトに均一に行うことによって、白度、歩留まりも向上し、砕米発生も少なくなるとともに、常温玄米貯蔵とほぼ同等か、それ以上の品質保持が可能となり、精白米貯蔵の可能性を見いだした。

  • 担当:食品総合研究所・食品工学部・流通工学研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8027
  • 部会名:食品
  • 専門:加工利用
  • 対象:稲類
  • 分類:普及

背景

わが国の米貯蔵は一部は籾、多くは玄米の形態で行われ、消費直前に精米し販売されている。
これは主として白米は品質劣化が早いため、長期貯蔵には不適であることによるが、貯蔵コストの面では白米が最も低く、白米の常温貯蔵での高品質保持技術が確立できればその効果は大きい。
白米の貯蔵性が低下する主な要因として精米時の糠層の剥離が粗雑であることが考えられることから、糠層の均一剥離が可能な精米技術を工夫することによって白米の高品質、低コスト長期貯蔵技術の確立を試みた。

成果の内容・特徴

  • 短粒種のみでなく長粒種、巨大粒など種々の米にも対応でき、普通精米の約1/3の低い搗精圧力で精米するため、砕米発生が少なく、精米表面の仕上がりが良好な精米機(低圧力精米機、図1)を開発した。
  • 表1のように低圧力精米を行うと現行の普通精米と比較して、ほぼ同じ精米率なら白度が3~5高く、しかも砕米発生も少なくなる。 また同じ白度に精米する場合には、精白率は約1~2%向上し、貯蔵性のみでなく、外観、歩留まりの面からみても低圧力精米の効果は大きい。
  • 貯蔵試験の結果、図2のように常温(年間25°C一定で試験)では普通精米は脂肪酸度が大きく増加しているが、低圧力精米はその増加が抑制されている。 同様に表2に示した一年貯蔵後の官能試験の結果においても低圧力精米は常温玄米貯蔵に対してほぼ同等か、それ以上の評価を得た。 このことは糠層の剥離状態が普通精米では粗雑であるのに対し、低圧力で精米すると糠層がソフトに均一に剥離され、その結果として品質劣化が抑制されるものと考えられ、精白米貯蔵の可能性を見いだした。

成果の活用面・留意点

精米時に精白率(精米歩留まり)、白度を測定し、糠層の剥離状況をチェックしながら精米する。
長期貯蔵を行う場合は水蒸気透過性の小さな包装資材を使用する。

具体的データ

図1 低圧力精米機
表1 精米試験結果
図2 脂肪酸度の変化
表2 官能試験結果

その他

  • 研究課題名:米の新貯蔵調質技術の開発、新形質米用調製機器の開発
  • 予算区分:総合的開発研究(新形質米)
  • 研究期間:平成6年度(平成3~6年)
  • 研究担当者:井尻 勉
  • 発表論文等:米の精米貯蔵に関する研究-種々の形状、形質の米の精米技術-、農業機械学会第53回大会講要、1994。
                      米の精米貯蔵に関する研究-精白米の調製、貯蔵技術-、農業機械学会第53回大会講要、1994。