澱粉からのゲル・ゾル食品の素材の開発

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要約

澱粉の特性を変換させ、ゾル・ゲル化する食品素材生産技術を開発した。各種澱粉に各種脂肪酸Naを澱粉に対して0.1%添加して加熱溶解することにより、透明な糊液となり、長時間の保存でも透明性が保持された。

  • 担当:食品総合研究所・食品理化学部・炭水化物研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8132
  • 部会名:食品
  • 専門:加工利用
  • 対象:雑穀類、いも類
  • 分類:指導

背景

最近、各種の水溶性多糖、特に、藻類多糖は健康指向のゾル、ゲル化食品素材として注目され、その需要が増加している。
しかし、その原科となる海藻資源は急激に減少しており、これに代わる食品素材の開発が強く求められてきた。
そこで、原料として豊富にある、澱粉を生物化学的、物理化学的処理を施すことにより、その特性を変換させ、主として、ゾル、ゲル化する食品素材を生産する技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 各種澱粉十各種脂肪酸Na系の透明性経時変化:コーン、ワキシーコーン、馬鈴薯、タピオカ、米、 甘藷、小麦、サゴの各澱粉3%にカプロン酸Na(C6)、カプリル酸Na(C8)、カプリン酸Na(Cl0)、ラウリル酸Na(C12)、ミリスチン酸Na(Cl4)、パルミチン酸Na(Cl6)、ステアリン酸Na(Cl8)、オレイン酸Na(Cl8:1)、リノール酸Na(C18:2)の各脂肪酸Na 0.1%を加えた場合、表1のように、澱粉と脂肪酸Naの組合せにより透明性保持に差異が見られ、コーンの場合はラウリンとミリスチンで極めて高い透明度を維持でき、l0日以上、4°Cで放置しても70%以上の透過率を示した。
  • コーンスターチ+ミリスチン酸Na系・添加量による透明性経時変化:コーンスターチ1,2,3%, ミリスチン酸Na0~0.20%の範囲で検討した結果、表2のように、ミリスチン酸Na 0.10%以上では透過率は糊液調製直後と殆ど変わらず、糊液調製90日後でも、80%の透過率であった。0~0.10%までは添加量に比例してほぼ直線的に透過率が上昇し、0.15%以上では僅かづつではあるが経時的に透過率が減少して、添加量が増えるほど透過率が低〈なった。
  • コーンスターチ+脂肪酸十アルカリ系での透明性経時的変化:コーンスターチ3%、脂肪酸0.1%に0~20、25mMの重曹、炭酸ナトリウムを混合して10日放置した結果、表3のようにラウリル酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸に炭酸ナトリウム5mMを添加することにより10日放置後でも50%以上の透過率を示した。

成果の活用面・留意点

これらの成果から澱粉を用いて透明度の高いゾル、ゲル形態の食品を製造することができるが、食塩、味成分を添加すると、白濁・老化する傾向があるので、従来のゾル、ゲル素材を混合して、白濁・老化を抑制する必要がある。

具体的データ

表1
表2
表3

その他

  • 研究課題名:澱粉の物性変換と機能性に関する研究
  • 予算区分:交流共同研究(大日本製薬(株))
  • 研究期間:平成6年度(平成4年~6年)
  • 研究担当者:小林昭一
  • 発表論文等:澱粉の溶解方法 日本特許出願、特願平5-165907、平5.6.14.