豆乳のゲル化過程の少量計測ー新しい加工適性評価法ー

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

豆乳のゲル化過程を動的粘弾性法により、連続測定し、豆腐加工特性を一粒大豆中のタンパク質量で評価した。
大豆7s及び11sグロブリンのゲル化と生成ゲルの物性の差異を明らかにした。

  • 担当:食品総合研究所・食品理化学部・食品物性研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8031
  • 部会名:食品
  • 専門:品質評価
  • 対象:豆類
  • 分類:指導

背景

豆腐は大豆タンパク質に、グルコノデルタラクトン(GDL)や硫酸カルシウム等の凝固剤を添加してできたゲル状食品で、原料には国産大豆が多く利用されている。
大豆タンパク質は主に7SおよびllSグロブリン(以下7S、11S)から構成されているが、近年、これらの特定成分を多く含む大豆の育成や、特定成分の分離が、技術的に可能になってきている。
特定成分の食品への利用について、以下の3点を目指して研究した。 (1)豆腐加工適性と関連の深い力学的物性測定により検討する。(2)育成途中の大豆や、分離精製が困難な成分の影響も評価可能なように、少量で精度良く測定できる方法を開発する。(3)最終生成物となる豆腐ゲルのみならず、その形成過程も連続して計測する。

成果の内容・特徴

  • 豆腐ゲルの動的粘弾性測定による評価法を確立し、このゲルの形成過程を力学的方法で初めて追跡した。
  • 開発した動的粘弾性法と、往来から行われていたゲル強度測定法は、高い相関性を示し、本法の実 用性・有効性が確認された。
  • 振り子振動の減衰を検出する減衰振動型レオメータを食品用に改良し、豆乳のゲル化時間を非接触・非破壊的に計測した。
  • 上述の二手法(1、3)は、豆乳L1~2ml、言い替えれば、ほぼ一粒の大豆中のタンパク質で一回の測定ができ、育成中の大豆等の少量試料による物性評価が可能になった。
  • 大豆中の7S、llSを用いて、GDLゲルのゲル化特性の違いを明らかにした。すなわち、11Sは7Sよりゲル化が速いが、最終的に形成されるゲルの弾性率はほぼ同じ(図1)で、ゲル強度は高かった。
  • カルシウムを凝固画剤としても、ゲル化が7Sよりも1lSの方が速い挙動が、GDL添加の場合と同様に観察された。しかし1lS含有率が高いカルシウムゲルで見られた離水は、7Sによって防止され、安定した豆腐様のゲルが形成された。
  • 7Sと11Sの混合系では、7S単独あるいはllS単独ゲルに比ベ、弾性率は低くなり、混合比5:5の時に最小値を示した(図2)。すなわち、7S含有量が11Sよりも高い場合は、7S含量が高いほど硬いゲルが生成した。
  • 分離大豆タンパク質(SPI)のGDLゲル中には、7S単独ゲルの様な細かい網目構造と、llS単独ゲルの様な粗い構造が両方含まれていた(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 少量で豆腐加工適性が評価できるため、農業研究センターの大豆育種研究者が、動的粘弾性法を取り入れ、検討している。
  • 本法よりさらに多機能の動的粘弾性測定が、分離精製した大豆7Sおよび11Sグロブリンのゲル化特性評価に用いられて、食品素材生産に役立っている。
  • 一粒の大豆から高収率で豆乳調製が可能になれば、一粒で豆腐加工適性が判断できる。

具体的データ

図1 7S、11Sのゲル化過程グラフ
図1 7S、11Sのゲル化過程
図2 7S-11S混合GDLゲルのゲル化時間toと動的第成立G'
図3 GDLゲルの走査型電顕像

その他

  • 研究課題名:大豆蛋白質の化学構造とゲル物性
  • 予算区分:経常、平成4年度プロジェクト研究調整費
  • 研究期間:平成6年度(平成3年~6年)
  • 研究担当者:神山かおる、西成勝好、佐野 洋
  • 発表論文等:Gelation of soybean 11S globulin by glucono-delta-lactone. Gums & Stabilisers for the Food Industry, 6, 267_272 (1992).
    Gelation properties of soymilk and soybean 11s globulin from Japanese-grown soybeans. Biosci.Biotech. Biochem., 56(5), 725-728 (1992).
    Rheological study on gelation of soybean 11s protein by glucono-δ-lactone. J. Agric. Food Chem,. 40 (6), 740-744 (1992).
    豆腐の物性測定に影響する諸因子の検討. 日食工誌, 39(8), 715-21 (1992).
    The effect of glucono-δ-lactone on the gelation of soybean 11S protein: Concentration dependence. Food Hydrocoll., 6(3), 263-274 (1992).
    Rheological studies on the gelation of soybean 7S and 11S proteins in the presence of glucono-δ-lactone. J. Agric. Food Chem., 41(1), 8-14 (1993).
    新評価手法による大豆7S, 11Sタンパク質のゲル化機構の解明. 平成3・4年度プロジェクト研究調整費による研究成果集, P.19 (1993).
    Physicochemical studies on gelation of soybean 7S and 11S proteins by glucono-δ-lactone. Developments in Food Engineering, 1, 12O-122 (1993).
    Effects of protein composition on gelation of mixtures containing soybean 7S and 11S globulins. Biosci. Biotech. Biochem., 59(2), 240-245 (1995).
    Rheological characteristics and gelation mechanism of tofu (soybean curd). J. Aric. Food Chem., 42(7), in press (1995).
    Application of a damped oscillation rheometer to observe sol-gel transition in a food system. Food Sci. Technol. Int., in press(1995).