米の浸漬温度・浸漬時間の調節による加工米飯の食味および食味保存性の向上

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要約

おにぎりやテイクアウト食品等の加工米飯は冷めても粘りを失わない必要がある。
冷めても美味しい加工米飯の製造条件を明らかにした。
米の浸漬温度が低く(5°C)浸漬時間を長くする(120分)と炊き上がった米飯の物性は軟らかくなり、かつ粘りは増加し品質が向上する。
また米飯の保存中の水分蒸発も少なく、良食味が長時間保存される。

  • 担当:食品総合研究所・素材利用部・穀類特性研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8045
  • 部会名:食品
  • 専門:食品品質
  • 対象:米
  • 分類:指導

背景

近年加工米飯はその種類、量ともに増加しているが、なかでも白飯が伸びている。
そのため冷めても美味しい白飯の製造法の開発が望まれている。
製造工程毎の浸漬温度、浸漬時間等の条件を変えて白飯を製造して物性面から検討し、冷めても美味しい白飯の製造条件を明らかにすることを目的とした。

成果の内容・特徴

  • 浸漬水の温度を5°C、15°C、25°Cの3条件とし、各温度における浸漬時間を5分、l0分、20分、30 分、40分、50分、60分、120分及び720分間浸漬処理した。浸漬後の重量を測定して米の吸水量を求めると、120分間で一定になった。浸漬温度25°Cでは吸水速度は早く一定に達する。一方浸漬温度5°Cでの吸水は吸水速度は遅いが、浸漬時間が長くなると25°Cよりもその吸水量は多くなる(図1)。このことは低温浸漬により、粘り良質の加工米飯を得るには浸漬時間を長くする(120分)必要があることを示している。
  • 浸漬5°C、15°C、25°Cで浸漬時間60分間、90分間、120分間及び720分間の組合わせ条件で白飯を製造し、テクスチュロメーターで硬さと粘りを測定した。その結果、浸漬温度が低い方が米飯の粘りが強くなり、低温浸漬どうしの比較では浸漬時間の増加に伴って米飯の粘りが増加し硬さが減少することが示され、120分以上の浸漬時間の場合には食味が粘りと硬さが適正となり、良好な食味になることが明らかとなった。(図2)。
  • 5°Cと25°Cで2時間浸漬して製造した白飯を25°Cで12時間保存後、75°Cで15分間白飯を再加熱した時の水分蒸発量は、浸漬温度25°Cよりも5°Cの方が水分の蒸発量が少なくなり保存性が向上する(図3)。以上のことより良質の白飯を製造するには米を浸漬する温度により浸漬時間を調整することが大切である。低温(5°C)で長時間(120分)浸漬することにより、軟らかく粘りがあり、かつ保存中の水分が蒸発しにくい白飯を製造することができる。また、浸漬中の温度管理については精密に行うことが大切である。

成果の活用面・留意点

この技術は加工米飯の製造に広く適用できる。
しかし原料米の品質により吸水速度、吸水量は違っ てくることが想定されるので追跡テストを行った上で応用することが望ましい。

具体的データ

図1 浸漬温度と浸漬時間の違いによる吸水量の経時変化
図2 浸漬温度と浸漬時間の違いによる硬さ、粘りの変化
図3 再加熱による白飯の蒸散水分の経時変化

その他

  • 研究課題名:加工米飯における製造条件と作業性・製品品質との関係解明予
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成6年度(平成5~7年)
  • 研究担当者:豊島英親、岡留博司、大坪研一
  • 発表論文等: