有機ゲルマニウム化合物と糖質の相互作用の解明およびその利用
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要約
種々の有機ゲルマニウム化合物が糖質、中でもケトースに対して高い親和性を有することを明らかにするとともに、これに基づいてグルコースからフルクトースへの新しい酵素異性化技術の開発を行った。
- 担当:食品総合研究所・応用微生物部・酵素利用研究室
- 代表連絡先:0298-38-8071
- 部会名:食品
- 専門:加工利用
- 対象:
- 分類:指導
背景
ある種の金属化合物が糖質や有機酸などと錯体を形成することが従来より知られていたが、有機ゲルマニウム化合物の特性を検討する中で本物質が糖質,特にケトースに対して強い親和性を有することを見いだした。
そこで、有機ゲルマニウム化合物のアルドース・ケトース間の異性化反応への影響を検討するとともに、これに基づいたグルコースからフルクトースへの新しい異性化技術の開発につき検討した。
成果の内容・特徴
- 有機ゲルマニウム化合物(図1)の存在下にグルコースの異性化を行うと最終的な異性化率(反応平衡時)はプロピオン酸誘導体(Ge-132)で75%,アラニン誘導体(Ge-385)80%,フェニルアラニン誘導体(Ge-373)では92%に達した(図2)。
また反応初速度も平均30~40%高くなり、有機ゲルマニウム化合物が明らかにグルコースの異性化を促進する効果を有することが判明した。
- 平衡時の異性化率は濃度依存性があり,グルコースとゲルマニウムの濃度が1:1のとき90%以上(Ge-373)に達したが、50:1では約52%と,対照区(Ge-373無添加区)とほぼ同じであった。
これらのことから有機ゲルマニウムが直接酵素を賊活するよりも,フルクトースと相互作用して反応の平衡をシフトさせるものと推定された。
- 紫外部差スペクトル(図3)により糖との見かけの解離定数(kd)を算出したところ,グルコース575.8mM,フルクトース28.5mMであり,有機ゲルマニウム化合物はフルクトースに対して明らかに高い親和性をもつことが判明した(図4)。
- 有機ゲルマニウム化合物の基本骨格構造とグルコースの異性化率との間には大差はないものの、いくつかの特徴的な関係が認められた。
即ち、アミノ酸骨格をもつ化合物は有機酸骨格のものより一般的に異性化率が高く、有機酸同士では炭素数の少ないものが効果的であった。
また、アミノ酸骨格同士では、フェニルアラニン誘導体が異性化率が高く、アミノ基が遊離状態のものよりアセチル基などでブロックしたものの方が優れていた。
成果の活用面・留意点
供試した有機ゲルマニウム化合物はいずれも安全性が確認されており,食品工業におけるグルコースからフルクトースへの変換,即ち異性化糖製造や種々のアルドース・ケトース間の互変異性に利用できる可能性がある。
しかし,糖によって異性化促進効果が異なるので,選択する糖の種類についても考慮する必要がある。
また,有機ゲルマニウムが高価であることから,その回収法の確立が重要である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:有機ゲルマニウム化合物と糖質の相互作用の解明およびその作用
- 予算区分:交流共同研究
- 研究期間:平成6年度(平成4~6年)
- 研究担当者:春見隆文
- 発表論文等:グルコースの異性化促進効果、平成5年度日本生物工学会講演要旨(1993)
有機ゲルマニウム化合物の構造・形態と異性化促進効果、平成5年度日本生物工学会講演要旨(1993)
グルコースの異性化方法および異性化促進剤、日本国特許、特願平04-360343(1993)
アルドース構造を有する化合物をケトース構造を有する化合物へ異性化する方法、異性化あるいは その促進剤、日本国特許、特願平 05-188877(1994)