ジアシルグリセロールとトリエン型多価不飽和脂肪酸の生理機能の解明
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要約
ジアシルグリセロールとα-リノレン酸はラット血清脂質濃度低下作用を示す。
この低下作用には吸収・代謝過程での脂質代謝酵素の変動が関与することが示唆された。
- 担当:食品総合研究所・食品機能部・栄養化学研究室
- 代表連絡先:0298-38-8083
- 部会名:食品
- 専門:食品品質
- 対象:
- 分類:研究
背景
様々な農林水産物の主要な脂質成分は人におけると同様に脂肪酸とグリセロールからなるいわゆるグリセロ脂質として存在する。
しかし、人の生体内にはほとんど存在しないグリセロ脂質構造を有する脂質成分や高度不飽和脂肪酸も認められる。
本研究では油脂の主成分であるトリアシルグリセロールとは脂質構造が異なるジアシルグリセロールとトリエン型多価不飽和脂肪酸に注目し、その構造の違いが生体での代謝・生理機能特性をどのように変化させるかをラットをモデルとして、酸素、細胞及び個体レベルで脂質代謝の面から明らかにし、循環器系疾患に有効な脂質成分の探索への基礎的地見とすることを目的とする。
成果の内容・特徴
- ジアシルグリセロール10%添加食はトリアシルグリセロール10%添加食に比較して、ラット血清トリアシルグリセロール濃度を低下させた。
さらにこの低下はジアシルグリセロールを食餌へ5%以上添加することで発現した。
- ジアシルグリセロールのラット胃内投与はトリアシルグリセロールの投与の場合と比較して、小腸カイロミクロンの脂質濃度を低下させ(図1)、さらにカイロミクロン脂質脂肪酸組成を変動させた。
- トリエン型多価不飽和脂肪酸の肝臓グリセロ脂質合成系酸素に対する特異性はモノエン型脂肪酸及びジエン型脂肪酸と比較して低いようであった(図2)。
- トリエン型多価不飽和脂肪酸の初代培養ラット肝臓細胞の培養培地中への添加はモノエン型脂肪酸、ジエン型脂肪酸を添加した場合に比較して、肝臓細胞からのトリアシルグリセロール分泌量を低下させた。
- トリエン型多価不飽和脂肪酸であるα-リノレン酸を主成分とするエゴマ油、ココナッツ油(飽和脂肪酸が主成分)及びサフラワー油リノール酸が主成分)を15%レベルで含む食餌をラットに与えると血清脂質濃度がエゴマ油群で他群に比較して低下した。
また、肝臓β-酸化活性はエゴマ油群で他2群に比較して上昇した(図3)。
- 肝臓ミトコンドリアとペルオキシゾームでの各種脂肪酸-CoAのβ-酸化速度はトリエン型>ジエン型>飽和脂肪酸の順であった。
また、ミトコンドリアでのβ-酸化の制限酵素であるカルニチンアシル転移酵素Iは飽和脂肪酸及びジエン型脂肪酸と比較してトリエン型脂肪酸に特異性が高かった。
成果の活用面・留意点
ジアシルグリセロールのラットへの投与はトリアシルグリセロールの投与に比較してラット血清トリアシルグリセロール濃度を低下させた。
この低下はジアシルグリセロールによる小腸カイロミクロン脂質濃度が一因となっている可能性が示された。
トリエン型多価不飽和脂肪酸であるα-リノレン酸に富む油脂は飽和脂肪、あるいはリノール酸を主成分とする油脂と比較してラット血清脂質濃度を低下させることがラット飼育実験にて明らかとなり、この作用にはラット肝臓の脂肪酸代謝系、特に脂肪酸β-酸化系が重要な役割を果たすことが示された。
具体的データ



その他
- 研究課題名:脂質構造が代謝・生理機能特性に及ぽす影響の解明
- 予算区分:大型別枠
- 研究期間:平成6年度(平成3年~9年)
- 研究担当者:村田昌一、井手 隆
- 発表論文等:Determination of cholesterol in sub-nanomnolar quantities in biological fluids by high-performance liquid chromatography: J.Chromatogr., 579,329-333(1992)
Dietary diacylglycerol-dependent reduction in serum triacylglycerol concentration: Ann.Nutr.Metab., 37,185-191(1993)
Alteration by diacylglycerols of the transport and fatty acid composition of lymph chylomicrons in rats: Biosci.Biotech.Biochem., 58,1416-1419(1994)