近赤外分光法による小麦・大豆全粒のタンパク質分析
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要約
近赤外分光法により、粉砕をしない状態の全粒小麦および全粒大豆タンパクの含量をそれぞれ、透過スペクトルを用いて測定精度0.56%および1.42%、反射スペクトルを用いて測定精度0.43%および1.23%で定量分析できる。
- 担当:食品総合研究所・分析評価部・非破壊評価研究室
- 代表連絡先:0298-38-8088
- 部会名:食品
- 専門:食品品質
- 対象:麦類、豆類
- 分類:研究
背景
近赤外分光法による小麦や大豆のタンパク質含量の定量分析においては、通常、試料の粉砕が必要である。
しかし、試料の粉砕処理には時間を要することから、近赤外分光法の特徴である迅速性が十分活かされていない現状にある。
そこで、試料を粉砕しない、全粒の状態で小麦および大豆のタンパク質含量を分析する方法を確立する。
成果の内容・特徴
- 粉砕しない状態の全粒小麦および全粒大豆の透過スペクトルおよび反射スペクトルを特別に設計・試作した全粒用試料セルを用いて測定した。透過スペクトル測定は 図1 Aの試料セルを用い、波長680nm~1235nmの範囲で行った。反射スペクトル測定は図1 Bの試料セルを用い、波長1100nm~2500nmの範囲で行った。検量線は重回帰分析(MLR)およびPLSRを用いて作成した。
- 小麦の透過スペクトルを用いた場合、PLSRで作成した検量線で予測標準誤差(SEP)は0.56%、バイアスは-0.03%であった(図2)。同様に、大豆の透過スペクトルを用いた場合、PLSRで作成した検量線でSEPは1.42%、バイアスは0.03%であった(図3)。
- 小麦の反射スペクトルを用いた場合、MLRで作成した検量線でSEPは0.43%、バイアスは0.02%であった(図4)。また、大豆の場合はそれぞれ、1.23%および-0.32%であった(図5)。
- 小麦、大豆ともに透過法および反射法でほぼ同等の測定精度が得られた(表1)。
成果の活用面・留意点
近赤外分光法による、粉砕しない状態の試料のタンパク質含量の定量分析は、迅速かつ簡便な方法であることから、試料の粉砕が困難な育種研究や多数試料の分析などの工業的な用途に有効な方法である。
しかし、粉体試料と比較してSEPが多少大きくなるため、実用化の場合には同一試料の繰り返し測定などの統計的処理が必要である。
具体的データ






その他
- 研究課題名:小麦・大豆のタンパク質含量の全粒分析法の開発
- 予算区分:特別研究(E P V)
- 研究期間:平成6年度(平成4年~平成6年)
- 研究担当者:阿部英幸、草間豊子、河野澄夫
- 発表論文等: