ペプチド合成用新規バイオリアクターシステム
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要約
ペプチド合成の効率化を図るため、荷電膜と液液抽出平衡関係を組み合わせた新しいパーストラクションシステムを考案し、酵素によるアスパルテーム前駆体生産に適用し、生産物のみが抽出分雑されることを実証した。
- 担当:食品総合研究所・食品工学部・プロセス工学研究室
- 代表連絡先:0298-38-7997
- 部会名:食品
- 専門:加工利用
- 対象:
- 分類:研究
背景
各種ペプチドは、注目を集めている機能性食品あるいは食品、医薬品素材である。
適当な酵素により2種類のアミノ酸を縮合させてジペプチドを生産する場合、平衡反応であるため、高い濃度の未反応アミノ酸と低濃度のジペプチドが存在し、効率的生産のためジペプチドのみを分離し、反応をさらに進行させることが要求される。
そこでモデルケースとして、甘味料として知られるアスパルテーム生産を対象として、荷電膜と液液抽出平衡を組み合わせた新しい分離システムを検討した。(図1、図2)
成果の内容・特徴
- N-ベンジルオキシカルボニル-L-アスパラギン酸(ZA)とL-フェニルアラニンメチルエステル(PM)とを原料とし、水系(PH6)でサーモライシンを利用することでアスパルテーム前駆体N-ベンジルオキシカルボニル-L-アスパルチル-L-フェニルアラニンメチルエステル(ZAPM)を得ることができる。しかし、平衡反応であるため、生成物濃度は低く、3成分からなる反応生成物が得られる。
- ZA,PM,ZAPMを含む緩衝液を正荷電膜を介しtert-アミルアルコールと接触させる。ZAは負荷電を有し、膜内に進入するが、液液平衡関係に依存した分配係数に従い、有機溶媒側に移行することはできず、その大部分が水相に存在する。PMは正荷電を有するため、膜との静電的反発により有機相側に透過することができず、水相に留まる。水相中で酵素的に合成されたZAPMは負荷電を有するため膜の反発を受けず、分配係数に従い有機相側にその大部分が抽出される。
- この抽出(Extraction)と膜の透過(Permeation)を組み合わせたパーストラクションシステムにより、図に示すようにZAPMのみを抽出できることがはじめて示された。
- 膜を用いることで酵素と有機溶媒との接触を避けることで、酵素寿命の延長も期待できる。
成果の活用面・留意点
移動速度が小さいため、さらに膜孔径とパーストラクション性能の関係、酵素反応との組合せ、装置のスケールアップなど、工学基礎の検討を続けていくことが必要である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:ペプチド合成用固定化担体の開発とバイオリアクターシステムの構築
- 予算区分:交流共同研究(大日精化工業株式会社)
- 研究期間:平成6年度(4年~7年)
- 研究担当者:中嶋光敏、鍋谷浩志
- 発表論文等:中嶋光敏、鍋谷浩志、磯野康幸、星野信夫、星野明、福島健司:成分分離法、平成6年8月15日、特許出願 J.Membrane Science に投稿中