粘度測定による照射コショウの識別

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要約

黒コショウ及び白コショウを粉砕して水に懸濁し、pHを13.8にしてアルカリ加熱糊化した後に、粘度を測定することにより、産地や貯蔵条件の影響を受けずに非照射コショウと照射コショウを識別することができた。

  • 担当:食品総合研究所・流通保全部・放射線利用研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8047
  • 部会名:食品
  • 専門:加工利用
  • 対象:コショウ
  • 分類:普及

背景

わが国では照射馬鈴薯以外の流通は認められていない。一方、世界的に最も多くの国で放射線照射しているのが香辛料、特にコショウである。コショウはすべて輸入されており、各食品会社とも、照射されたコショウが輸入されて使用することを恐れており、照射コショウの検知技術の開発に対して強い要望を抱いている。そこで、粘度測定、近赤外分析などの物理的手法を用いて照射コショウの検知を試みたところ、粘度は照射試料と非照射試料で違いが認められたので、粘度測定による照射コショウの検知技術を確立するための検討を行った。

成果の内容・特徴

  • コショウ粉末の10%(W/V)の水懸濁液40mlに33%NaOHを2ml添加してpHを13.8に調整し、直ちに沸騰水中で時々振とうしながら30分問加熱糊化した後に、3時間室温(20~30°C)に放置して冷却し、回転粘度計(ハーケ社)で室温における粘度を測定することにより、非照射の黒コショウや白コショウと5kGy以上照射したコショウを識別することができた。
  • コショウ懸濁液の粘度の低下は放射線照射に特有なものであり、乾熱殺菌、エチレンオキサイドガス殺菌、加熱水蒸気による気流式殺菌を施しても粘度低下は認められなかった(表1)。
  • ドイツ、フランス、ハンガリー、日本の合計10機関でそれぞれの手持ちの粘度計を用いて本方法をクロスチェックしたところ、いずれの機関でも非照射試料やエチレンオキサイドガス(EOG)殺菌したコショウと5kGy以上照射した試料を識別することができた(表2)。
  • コショウの産地や貯蔵条件の影響を受けずに、照射コショウと非照射コショウを確実に識別することが可能であった。

成果の活用面・留意点

本成果はFA0/IAEA主催の国際プロジェクトで報告して国際的に普及を図っている。また、いくつかの会社で本方法を用いて原料として買い入れるコショウをチェックしている。

具体的データ

表1 種々の殺菌処理を施したコショウの粘度微生物数
表2 クロスチェック試験で得られたパラメータ値

その他

  • 研究課題名:放射線照射した食品の物理的特性に関する研究
  • 予算区分:原子力
  • 研究期間:平成7年度(平成4~7年)
  • 研究担当者:林 徹、等々力節子
  • 発表論文等:Irradiation effects on pepper starch viscosity, Journal of Food Science, 56 (1), 118-120 (1994).
                      Conditions of viscosity measurement for detecting irradiated peppers, Radiation Physics & Chemiestry, 45 (4), 665-669 (1995).