製パンにおける食塩代替製品による減塩および無塩パンの製造

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要約

製パンには食塩が0.5~2%使用されているが、有用な食塩代替品は見出されていない。そこで、新規代替品としてグルコン酸ナトリウムとグルコン酸カリウムを使用した結果、減塩パンあるいは無塩パンの製造が可能なことを見出した。

  • 担当:食品総合研究所・応用微生物部・酵母研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8073
  • 部会名:食品
  • 専門:加工利用
  • 対象:
  • 分類:普及

背景

製パンにおいては食塩は生地物性の改良、風味の付与、貯蔵性の向上など、重要な役割を果たしている。しかし、食塩摂取量の低減は我が国のみならず欧米諸国においても大きな課題となっているが、有用な食塩代替品は見出されていない。そこで、本研究では製パンにおいて食塩と同程度の効果を発揮する新規代替品の探索を行い、食塩、特にナトリウムの低減と食塩無使用での製パンの可能性について検討した。

成果の内容・特徴

  • 新規代替製品としてグルコン酸ナトリウムおよびグルコン酸カリウムを用い、食パン製造時に食塩とグルコン酸ナトリウムあるいはグルコン酸カリウムを併用あるいは単独で使用し、生地物性をエキステンソグラフで測定した結果、食塩の3/4をグルコン酸ナトリウムあるいは1/2をグルコン酸カリウムで代替しても、食塩2%との間に差はなく、製パン時の作業性は、全てを代替しても何ら問題がなかった(表1、2)。
  • 製パン試験の結果でも、グルコン酸ナトリウムあるいはグルコン酸カリウムを食塩と併用あるいは単独使用しても、パン体積には影響は見られず、品質評価点は新規代替品を単独使用したパンで普通、食塩との併用ではやや良いと評価された(図1)。
  • 菓子パン(食塩使用量0.7%)では、パン体積およびパン比容積の増大が見られ、品質評価点でも食塩使用パンとの間に差はなく、やや良いと評価された。
  • パンの貯蔵性に関しても食塩使用パンとの間に差はなく、新規代替品を製パン原料として使用することで、減塩パンあるいは無塩パンの製造が可能なことを見出した。

成果の活用面・留意点

これらの結果は、食塩、特にナトリウムの摂取が制限されている多くの人々にとって朗報であるばかりでなく、食塩摂取過多が問題となっている現状において、食品加工分野において加工原料として使用されている食塩の代替品としての研究が必要と考えられる。

具体的データ

表1 生地特性に及ぼす食塩とグルコン酸ナトリウム(GNa)あるいはグルコン酸カリウム(GK)の併用および単独使用の影響
図1 食塩(NaCl)とグルコン酸ナトリウム(GNa)あるいはグルコン酸カリウム(GK)の併用および単独使用で得たパンの断面と品質評価結果

その他

  • 研究課題名:焙焼成品の製造における食塩代替製品の利用に関する研究
  • 予算区分:経常(交流共同研究:藤沢薬品工業(株))
  • 研究期間:平成7年度(平成6年~7年)
  • 研究担当者:高野博幸・山田知枝
  • 発表論文等:焙焼製品へのグルコン酸ナトリウムおよびグルコン酸カリウムの利用、特願平6-303381、平6.12.7. 外国特許出願(米国、EP、オーストラリア、カナダ、韓国、台湾)
                      製バンにおける食塩代替品の利用に関する研究(第2報)グルコン酸ナトリウムおよびグルコン酸カリウムの利用、日食工学会第43回大会講演要旨集、1998.3.