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日本の伝統的飲料である緑茶に含まれ、種々の機能性が確認されているカテキン類の、高速液体クロマトグラフによる迅速、簡易でかつ実用上充分な感度を持つ分析法を開発した。
緑茶中に含まれるカテキン類は、緑茶の味覚の上で重要な要素となっているばかりでなく、消臭作用から、抗酸化作用、抗がん作用、抗菌作用、その他の広範な機能性を有し、飲食物中に含まれる有用な機能性物質として注目を集めている。しかしカテキンは構造の類似したいくつかのポリフェノー化合物の総称であり、また、酸化等により種々の変化を受けた物も同時に存在することがある。このため個別のカテキン類を精度良く分析するには若千煩雑な手法を必要としていた。今回は、茶の品質評価並びに機能性に関する研究に供するため、緑茶中に比較的多く含まれ、機能性の中心と考えられているエピガロカテキンガレート(EGCg)を中心に関連のカテキン類の高度液体クロマトグラフ(HPLC)による迅速分析法を開発した。
逆相HPLCカラム(Develosil ODS-HG, 4.6mm i.d.×150mm, 野村化学)と、水-アセトニトリル-リン酸の混合液を移動相として用い、アセトニトリル濃度でグラジエントをかけることにより、図1、2 に示したように、8種のカテキン((-)-epicatechin(EC)、(-)-epigallocatechin(EGC)、(-)-epicatechin gallate(ECg)、(-)-epigallocatechin gallate(EGCg)、(+)-catechin(C)、(-)-gallocatechin(GC)、(-)-catechin gallate(Cg)、(-)-gallocatechin gallate(GCg))とカフェイン(CAF)を分析時間約20分でほぼ完全に分離することが出来た。各種緑茶の50%アセトニトリル抽出液を用いた実験でも特に測定の妨害となるピークは見られなかった。またHPLCに導入する試料のアセトニトリル濃度を25%以上にするとピークの形状等に悪影響が見られた。各々の物質の定量限界は2ng程度で検量線は2ng~2μgの範囲で直線性があり、試料の保持時間のCV値はO.5%以下、定量値のCV値は2.5%以下であった。
本分析法を用いたときの試料の分離状況は温度により著しく影響を受けるため、分析にあたってはカラム恒温槽を用いる必要がある。また、試料の調製にあたっては、一部のフィルターにカテキン類、特にEGCgを吸着する性質のあるため、試料の濾過に際しては、フィルターと溶媒の組み合わせを確認しておくことが望ましい。