非接触による電導度測定法

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要約

簡便・迅速な成分測定法として広く用いられている電導度測定の効率向上、メンテナンスの簡易化等を目的として、LC-高周波発振回路のコイルを検出器に用いて、試料電導度を非接触で迅速に測定するシステムを開発した。

  • 担当:食品総合研究所・食品工学部・計測工学研究室
  • 部会名:食品
  • 専門:食品品質
  • 対象:
  • 分類:指導

背景

加工プロセスを管理するための検査においては、検出部が食品に直接触れるために、食品を汚染する可能性が高く、機器洗浄が必要なために迅速性に欠ける、などの問題がある。本研究では、高周波(10~20MHz)で発振状態にあるコイルを検出器として、直接試料に触れることなく試料電導度を簡便・迅速に取得することができる電導度計を開発した。

成果の内容・特徴

  • 静電容量制御型のLC-高周波発振回路を制作し、発振周波数と発振強度をパソコンからの指令により変えながら発振強度の変化を測定する装置、ならびに検量線より電導度を推定するソフトウェアを開発した(図1)。
  • 発振強度変化は試料電導度に対して非線形な変化を示し、2個の極値を有することを見出した。また、発振周波数が高くなるに従い、発振強度変化が大きくなるとともに、極小点がわずかずつ高電導度側にシフトすることを明らかにした(図2)。
  • 種々の形状の測定用コイルを試作し、試料電導度-発振強度特性曲線の形状が試料充てん部の寸法に依存することを明らかにした(図3)。特に、測定精度に影響する極小点の挙動については、試料充てん部の直径に対して図4のような関係にあることを明らかにした。以上のことから、測定対象の特性にあわせて高精度の測定が可能なコイルの製作に必要な知見が得られた。

成果の活用面・留意点

本手法は液体・固体によらず、電導度測定が可能であるとともに、測定可能な電導度範囲が広い(10-2~200mS/cm)ことを特徴とする。電導度測定は有機酸の生成量や電解質含量の簡便なモニタリング法として有効であることから、醸造や発酵プロセスの管理、あるいは水質管理から高塩分濃度の食品まで、幅広い対象の計測が可能である。ただし、形状因子が重要なファクタとなることから、固形物や高粘度の食品への適用に際しては形状・密度等の管理が必要である。

具体的データ

図1 測定システム構成
図2 試料伝導率-発振強度特性曲線
図3 コイル形状と特性極性との関係
図4 極小点の電導度と試料充てん部の直径との関係

その他

  • 研究課題名:短波領域電磁場における電導現象を用いた非接触電導度測定法の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(平成5年~平成7年)
  • 研究担当者:乙部和紀、杉山純一、菊池佑二
  • 発表論文等:非接触電導率測定器(特許出願中;特開平7-318600)
                      高周波回路を用いた非接触型電導率検出器に関する基礎的研究(1)(2)、日本分析化学会第43年会議要集 p.172(1994)、第44年会議要集 p.213(1995)。