フィルム包装による生体内抗酸化機能性物質の保持

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要約

ブロッコリーの流通過程において、1日当たりの酸素透過量1000ml程度のフィルムで個包装すると、グルタチオン、クロロフィル、β-カロテン、アスコルビン酸等の成分をバランス良く保持することができた。

  • 担当:食品総合研究所・流通保全部・食品包装研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8037
  • 部会名:食品
  • 専門:加工利用
  • 対象:花菜類
  • 分類:指導

背景

包装技術を用いると低酸素・高二酸化炭素条件などの特殊条件を容易に得ることができる。そこで機能性成分の有効利用という立場から、包装環境下における食品の機能性成分、特に生体内抗酸化成分(グルタチオン)の変動要因を明らかにし、制御技術を検討する。さらに、クロロフィル、アスコルビン酸、β-カロテン、グルタチオン等の成分を最も良く保持できるガス濃度条件を明らかにし、最適包装設計を行う。

成果の内容・特徴

  • クロロフィル、アスコルビン酸、β-カロテンの減少が比較的少なく、グルタチオンを保持できる最適なガス濃度条件は、酸素2%、二酸化炭素4~10%であった。
  • グルタチオンは酸素濃度が0.5%以下になると、二酸化炭素濃度には関係なく急激に減少した。
  • 袋内におけるブロッコリーの酸素消費量、二酸化炭素放出量を目的変数、袋内の酸素・二酸化炭素濃度と貯蔵時間などを説明変数とする重回帰分析を行い、呼吸速度モデルを作成した(表1)。
  • ガス濃度変化のシミュレーションの結果、1日当たりの酸素透過量1000ml/day・atm(15°C)のフィルムで袋内の酸素濃度が約2%、二酸化炭素濃度が約5%となった(図1)。
  • 実際に同程度のガス透過性をもつフィルムでブロッコリーを個包装貯蔵した結果、クロロフィル、アスコルビン酸、β-カロテン、グルタチオンともに7日間の貯蔵期間中は比較的安定して保持された(図2)。

成果の活用面・留意点

ブロッコリーだけでなく、呼吸パターンの異なる他の青果物でも適用することができることを確認する必要がある。

具体的データ

表1 呼吸モデル
図1 1日当たりの酸素透過量
図2 包装したブロックリーのクロロフィルaとグルタチオンの変化

その他

  • 研究課題名:包装技術による生休内抗酸化機能性物質の制御
  • 予算区分:一般別枠(健康機能)
  • 研究期間:平成7年度(平成5年~10年)
  • 研究担当者:長谷川美典、石川 豊、平田 孝(現・京都大学農学部)
  • 発表論文等:MA包装ブロッコリー中の色素・アスコルビン酸・グルタチオンの挙動 日食工誌.42巻12号、996-1002(1995)