コクゾウムシの発育阻害物質探索のための人工米によるバイオアッセイ
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要約
穀粒内でのみ生育するコクゾウムシに制御効果のある発育阻害物質を人工米により簡易に判定できる方法を開発し、種々の植物由来物質を対象にした探索が可能となった。
- 担当:食品総合研究所・流通保全部・貯蔵害虫研究室
- 代表連絡先:0298-38-8081
- 部会名:食品
- 専門:食品品質
- 対象:害虫
- 分類:指導
背景
コクゾウムシ(Sitophilus zeamais)は収穫後の穀物類、特に、わが国においては米の流通・貯蔵過程で加害を行う重要な害虫である。本種は米粒のように一定の硬度をもった固形物のみに産卵し、その内部で発育過程を経るため、発育阻害物質の探索を行う場合、通常のバイオアッセイ法は応用できない。そこで、本研究では、コクゾウムシの発育阻害物質の探索に有用なバイオアッセイ法を開発し、従来、不可能であった他の植物由来物質のコクゾウムシに対する制御効果について明らかにする。
成果の内容・特徴
- 玄米粉(<70メッシュ)を水と4:3の割合で混練し、離型性の良いテフロンリングを型枠として人工米を成形した(図1、図2)。人工米ヘコクゾウムシに産卵させ、玄米との比較を行ったところ、発育に要する日数と羽化数ともに同様であることが明かとなった(表1)。人工米は容易に水で溶解するので、コクゾウムシの全発育過程を追跡観察することが可能で、阻害物質がどの段階でコクゾウムシに作用するかを判定することが出来る。
- 阻害試験は、供試物質を玄米粉と混合調整した人工米をバイアルに10~20粒入れ、3~5対のコクゾウムシ成虫を、25°C、70%rhの環境下で1週間産卵させ、その後の発育状況とともに、発育日数及び羽化数を観察した。
- オリザシスタチンI及びII(米に含有されるプロテアーゼインヒビター)、α-アミラーゼインヒビター(インゲンマメより精製)、キチン結合性蛋白CB1(Bacillus licheniformisの生産蛋白)について調査したところ、オリザシスタチン及びCB1は、0.2~0.3%の濃度で発育遅延効果が認められたが、完全な致死には、前者では1%、後者では0.5%以上を必要とした。
- 食用豆類は、コクゾウムシの加害を受けないことが知られているので、その阻害効果をダイズ、インゲンマメ、アズキ、ササゲについて調べたところ、ダイズは0.1%で発育遅延効果をもち、0.5%で全てを致死させることが判明した。
- ダイズ成分のうち、阻害の想定されるトリプシンインヒビターとサポニンについて、コクゾウムシの発育日数及び内的自然増加率への影響を調査したところ、後者は0.025%で顕著に発育を阻害し、0.1%で完全な羽化阻害を示した(表1)。
成果の活用面・留意点
本法で得られた成果は、近い将来、遺伝子組み換えによるコクゾウムシに食われない米の創出のために有用となろう。
具体的データ



その他
- 研究課題名:植物由来の昆虫発育阻害物質等による貯蔵食品害虫の防除法の検討
- 予算区分:一般別枠(安全性向上)
- 研究期間:平成7年度(平成3~7年度)
- 研究担当者:中北 宏、藤井 浩、池長裕史、宗田奈保子
- 発表論文等:人工米を用いたコクゾウに対する発育阻害物質オリザシスタチンの効果判定 第36回日本応用動物昆虫学会大会講演要旨(1992)
キチン結合性蛋白CB1のコクゾウに対する発育阻害効果 第37回日本応用動物昆虫学会大会講演要旨(1993)
コクゾウムシの発育阻害物質の探索 第39回日本応用動物昆虫学会大会講演要旨(1995)
Assesment of inhibitory effects of biologically originated substances on development of S. zeamais, XX International Congress of Entomology Abstract (1996)