単分散エマルションの製造を目的としたマイクロチャネル乳化法

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要約

シリコン基板状に精密に作成されたマイクロチャネルを用い、分散相の連続相への供給を精密に制御することによる新しいエマルションの製造方法を開発した。

  • 担当:食品総合研究所・食品工学部・プロセス工学研究室・計測工学研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7997
  • 部会名:食品
  • 専門:加工利用
  • 対象:
  • 分類:指導

背景

単分散エマルションの製造を目指して様々な手法が開発されてきたが、膜乳化法の出現によってサブミクロンからミクロンオーダーの均一粒径を持つエマルションの製造が可能となった。しかし、膜乳化法を用いても、10ミクロン以上の単分散エマルションを製造することは困難である。一方、シリコン基板に精密なマイクロチャネルを作成し、血液の流れを顕微ビデオシステムで観察することによって血液の診断を行う手法が提案されている。本研究では、このシリコンマイクロチャネルを利用して、マイクロチャネルを介した分散相の連続相への移動を顕微ビデオシステムでリアルタイムに制御することによる新しい単分散エマルションの製造方法(マイクロチャネル乳化法)を開発した。

成果の内容・特徴

マイクロチャネル乳化法におけるエマルションの製造装置

  • マイクロチャネル乳化法におけるエマルション製造装置の概略を図1に示す。
  • 図2に示されるように、一連の製造プロセスはマイクロチャネル基板に圧着したガラス面からリアルタイムに光学的に観察することが可能である。

マイクロチャネル乳化法におけるエマルションの製造プロセス

  • マイクロチャネルモジュール内のチャネルの両側に連続相となる水で満たす。
  • 圧力を精密に制御しながら、チャネルに隔てられた領域の一方から分散相の油を供給する。
  • 供給した油がチャネルを通過して反対側の水相に送り出された際、瞬間的に油粒子が生成される。

マイクロチャネル乳化法の特徴

  • 粒子の生成に要する操作圧力は水、油および添加する界面活性剤によって異なる。
  • 粒子径はチャネルのサイズによって決定されるため、マイクロチャネルの細孔構造を精密に設計することによって、様々な単分散エマルションを得ることが可能である。
  • マイクロチャネルに疎水化処理を施すことによって、水が分散相となるW/Oタイプのエマルションを製造することが可能である。
  • 図3に示すように、連続相の条件を変化させることによって製造されるエマルションの経常を変化させることも可能となる。

成果の活用面・留意点

エマルションの種類に応じたマイクロチャネルのサイズおよび形状、また、連続的にエマルションを製造するための装置および操作条件を検討することが今後の課題である。
また、本法によって製造されたエマルションの中には、油相の薄膜で区切られた細胞組織に近い形状を持つものもあり、これは、本研究が生体類似膜や人工細胞の作成といったテーマに発展する可能性を秘めていることを示唆するものである。

具体的データ

図1 マイクロチャネル乳化法におけるエマルション製造装置の概略
図2 マイクロチャネル乳化法におけるO/Wエマルションの生成プロセス:0.3wt%ソルビタンモノオレート・トリオレイン溶液/水系
図3 マイクロチャネル乳化法における様々な形態のW/Oエマルションの生成

その他

  • 研究課題名:バイオ生成産物の膜分離における選択透過性の制御
  • 予算区分:科学技術特別研究
  • 研究期間:平成7年度(平成5年~7年)
  • 研究担当者:川勝孝博、中嶋光敏、鍋谷浩志、菊池佑二
  • 発表論文等:川勝孝博、菊池佑二、中嶋光敏、エマルションの製造装置及び方法、特許出願平8-31882
                      T. Kawakatsu, Y. Kikuchi and M. Nakajima, Microchamel Emulsification by Visual Microprocesing Method, The 1996 Internationa1 Congress on Membrane Processes, 平成8年8月18日~23日, Yokohama(Japan)