糖鎖および関連誘導体の機能開発に関する研究

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要約

サイクロデキストランの生理活性を検討し、ムシ歯S.mutansの水不溶陸グルカン合成酵素の活性を著しく抑制することを明らかにした。この作用はう蝕予防の機能をもつ新しいオリゴ糖として実用化に進み得る可能性を示唆している。

  • 担当:食品総合研究所・生物機能開発部・分子機能開発研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8079
  • 部会名:食品
  • 専門:ハイテク
  • 対象:工芸作物
  • 分類:指導

背景

本研究ではすでに新規環状オリゴ糖として報告したサイクロデキストランについて、その機能開発をめざして生理活性の作用を検討した。サイクロデキストランはBacillus circulans T-3040株の酵素作用によって合成される環状オリゴ糖で、これらの糖がむし歯の原因物質の1つとされる水不溶性グルカン(ムタン)の合成を抑制する効果について、グルカン合成酵素の阻害反応を目安として、検討を進めた。

成果の内容・特徴

  • サイクロデキストランは既に報告した方法によって調製し、ここでは主として7糖(CI-7)と8糖(CI-8)を用いた。
  • グルカン合成酵素はLeuconostoc mesenteroides,Streptococcus mutansから調製した。CIの阻害作刷ま生成還元糖量、生成グルカン量を定量して求めた。また、HPLCカラムを用いて反応生成物全体の変化を分析した。
  • L.mesenteroidusのデキストラン合成酵素がショ糖からデキストランを合成する反応にCIを添加し、90%以上の阻害を生じることがわかった。
  • この阻害は還元糖およびグルカン量の両者の生成を抑制するものであった。反応速度論的な解析により、CIは基質のショ糖に対して拮抗阻害を呈し、阻害定数(Ki)はCI-7で0.25,CI-8で0.64mMと低濃度域で極めて強い阻害を与えた。
  • デキストラン合成の阻害はα-CD、パラチノース、マルチトールなどに比べてはるかに強い結果が得られた(図1)。
  • 生成分のHPLC分析ではショ糖の消費が強く抑制されていることが示された(図2)。
  • S.mutansのグルカン合成酵素の反応において2gのショ糖を基質として生成するムタン量にCI添加系で高い効果が見られた(図3)。

成果の活用面・留意点

サイクロデキストランがむし菌、S.mutansの水不溶性グルカン合成酵素の作用を著しく抑制することが明らかとなった。この作用は食品素材としてう蝕予防の効果を利用できる可能性を示唆している。食品用素材としてサイクロデキストランを用いる場合には、その価格が大きな問題になる。デンプンに比べてデキストランは医薬用に用いられているために高価格を維持しており、生産コストの低減化を図る必要がある。

具体的データ

図1 各種糖質によるデキストラン合成酵素の阻害
図2 デキストラン合成酵素による反応生成物のHPLC分析
図3 S.mutansのグルコシルトランスフェラーぜによるムタンの合成

その他

  • 研究課題名:糖鎖および関連誘導体の機能開発に関する研究
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年(6年~9年)
  • 研究担当者:小林幹彦、舟根和美
  • 発表論文等:T. Oguma, T. Horiuchi, and M. Kobayashi:Novel cyclic dextrins, cycloisomaltooligosaccharides, from Bacillus sp. T-3040 culture, Biosci Biotech Biochem., 57, 1225-1227 (1993).
                      T. Oguma, K. Tobe, and M. Kobayashi:Purification and properties of a novel enzyme from Bacillus spp. T-3040, which catalyze the conversion of dextran to cyclic isomaltooligosaccharides, FEBS Lett., 345, 135-138 (1994).
                      M. Kobayashi, K. Funane, and T, Oguma:Inhibition of dektran and mutan synthesis by cycloisomaltooligosaccharides, Biosci. Biotech. Biochem., 59, 1861-1865 (1995).