タウリン合成酵素の制御機構の解明

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要約

含硫アミノ酸代謝産物、タウリンの合成系酵素の活性は種々の食品成分や薬剤により特徴的に変化することが示された。

  • 担当:食品総合研究所・食品機能部・栄養化学研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8083
  • 部会名:食品
  • 専門:食品品質
  • 対象:
  • 分類:研究

背景

含硫アミノ酸代謝産物であるタウリンは種々の生理活性を持つ物質として知られている。タウリンは魚介類をはじめとする種々の食品にも含まれるが、タウリンが食餌から供給されない場合、生体内での含硫アミノ酸からの生合成がその唯一の供給源となる。しかし、食品成分がタウリン合成系酵素の活性に与える影響に関する知見は少ない。本研究では食品成分や薬剤が生体内でタウリン合成が最も活発な組織である肝臓でのタウリン合成酵素(システインジオキシゲナーゼ、システインスルフィン酸脱炭酸酵素およびアスパラギン酸アミノ転移酵素)の活性、組織タウリン濃度および尿中タウリン排泄に与える影響についてラットを用いた動物実験で調べた。

成果の内容・特徴

  • 従来の放射性同位元素法に換えて、HPLC法によるシステインスルフィン酸脱炭酸酵素の活性測定法を開発した(図)。
  • 低含硫アミノ酸タンパク質、水溶性食物繊維、コレステロール、胆汁酸およびタウリン低下剤(グアニジノエタンスルフォン酸)をラットに投与すると肝臓を含めた種々組織のタウリン濃度は低下した(表)。
  • システインジオキシゲナーゼ活性はこのように組織タウリン濃度が低下する条件で低下した。一方、システインスルフィン酸脱炭酸酵素活性はこのような条件下で低下する場合と逆に誘導される場合があることがわかった。アスパラギン酸アミノ転移活性も種々条件下で変化するが、その程度は小さかった(表)。
  • 以上のようにシステインジオキシゲナーゼ活性は組織タウリン濃度と平行した変化を示すことから、本酵素はタウリン合成の制御酵素であると判断された。
  • 尿中タウリン排泄量はタウリン低下剤処理条件下を例外として組織タウリン濃度やシステインジオキシゲテーゼ活性が減少する条件下で減少することから、生体内のタウリン合成能を反映すると考えられる(表)。

成果の活用面・留意点

本研究により種々の食品成分により組織タウリン濃度が変化すること、またこの変化はタウリン合成系酵素活性の変化に基づくことが明らかとなった。タウリンは生体内で種々の生理活性を示す物質であり、このようなタウリン代謝系の変化が生体に与える影響について追求することが食品の機能性や安全性を評価する上で重要である。

具体的データ

図 システインスルフィン酸脱炭酸酵素反応性生物のHPLCによる分析
表 食品成分と薬剤がラット肝臓のタウリン合成系酵素の活性に与える影響

その他

  • 研究課題名:食品成分が含硫アミノ酸代謝に与える影響の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(平成5年~7年)
  • 研究担当者:井手 隆、村田昌一
  • 発表論文等:(1) Dietary modifications of the biliary bile acid glycine:taurine ratio and activity of hepatic bile acid-CoA:amino acidN-acyltransferase (EC2.3.1) in the rat. T. Ide, S. Kano, M. Murata, T. Yanagita and M. Sugano (1994) Br. J. Nutr. 72, 93-100,
                      (2) Dietary fiber-induced changes in bile acid conjugation and tarurine metabolism in rats. T. Ide (1994) in Food Hydrocolloids:Structures, Properties and Functions (K. Nishinari and E. Doi eds.) pp. 491-496, Plenum Press, N. Y.
                      (3) Reduction by guanidinoethane sulfonate of the activities of enzymes involved in tarurine synthesis in rat liver. T. Ide and M. Murata (1994) Biosci. Biotech. Biochem. 58, 1584-1588.