生体内における脂質過酸化反応のフラボノイドによる抑制作用

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要約

生理機能の注目されているフラボノイドが、脂質の消化吸収過程のエマルジョンの酸化に対して、ビタミンEと共存することにより顕著な相乗的な抗酸化活性を示すことを明らかにするとともに、その相乗作用の発現のメカニズムを解明した。

  • 担当:食品総合研究所・食品理化学部・脂質研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8039
  • 部会名:食品
  • 専門:食品品質
  • 対象:
  • 分類:研究

背景

食品に含まれる抗酸化成分は摂取された後に、様々な疾患に関与する生体内の酸化的障害を予防する作用があると考えられる。植物制食品に広く存在するフラボノイドは、強い抗酸化活性がありビタミン類などとともに生理機能が注目される。フラボノイドは、生体の中にはあまり吸収されず消化管内の活性の発現が重要と考えられるため、消化吸収過程での脂質の酸化の抑制作用を明らかにすることを目的とした。

成果の内容・特徴

  • 脂質の消化吸収過程のモデル系として魚油の胆汁酸塩エマルジョンを用い、消化管内での酸化の主な触媒と考えられるヘム鉄による酸化反応に対する抑制作用を、代表的なフラボノイドであるケルセチン(図1)を用いて検討した。
  • ケルセチンは、精製魚油を用いたヘム鉄触媒による酸化反応に対し、抗酸化成分の中で最も広く使われているビタミンEよりもかなり強い抗酸化活性を示した(図2)。また、ビタミンEと共存させると、両成分の減少がともに抑制され顕著な相乗的な抗酸化作用が発現した(図3)。フラボノイドは消化管内で有効な抗酸化物質として作用すると推定される。
  • 相乗作用の発現メカニズムは、エマルジョンの表面に局在することで表面で惹起される酸化開始反応を効果的に抑制するケルセチンと、エマルジョンの内部に存在することで内部で進行する酸化成長反応を効果的に抑制するビタミンEのsite-specificな作用の組み合わせによることを解明した。

成果の活用面・留意点

フラボノイドの生体内での抗酸化作用は、実験動物などを用いた検討によりさらに明らかにされていくことが期待される。また、フラボノイドとビタミンEがエマルジョンで相乗的な抗酸化作用を発現することから、類似の不均一系からなる様々な油脂食品などでも、両成分と同様な抗酸化物質を共存させて用いることで強い抗酸化活性が得られる可能性がある。

具体的データ

図1 ケルセチン
図2 魚油エマルジョンのミオグロビン触媒による酸化反応に対するケルセチンとビタミンEの抗酸化作用
図3 魚油エマルジョンの酸化反応に対するケルセチンとビタミンEの相乗的な抗酸化作用

その他

  • 研究課題名:天然抗酸化剤の活性発現機構の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(平成7~10年度)
  • 研究担当者:星野智巻、寺尾純二
  • 発表論文等:Antioxidative Activity of Quercetin in Hemoprotein-Induced Oxidation of Fish Oil-Bi1e Salt Emulsion,International Symposium on Natural Antioxidants,Abstract P.257(1995)
                      Synergistic Effect of Quercetin andα-Tocopherol in the Inhibition of Myoglobin-Induced Oxidation of Fish Oil-Bile Salt Emulsion,21st World Congress and Exhibition of the International Society for Fat Research,Abstract P.53(1995)