ガム質多糖製造技術の開発

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要約

澱粉にマルトースなど還元末端をもつ糖質を混合して高温攪拌加熱し、物性を変換させてガム様特性が付与できることを見い出し、新規なガム質澱粉、その製法およびその用途を開発した。当該ガム質澱粉は咀嚼性食品製造用素材として利用できる。

  • 担当:食品総合研究所・食品理化学部・炭水化物研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8132
  • 部会名:食品
  • 専門:加工利用
  • 対象:雑穀類、いも類
  • 分類:研究

背景

従来のガム質糖質としては、グアーガムなど各種のものがあり、特にアラビアガムは油脂分散性に優れ、各種食品素材存在下でも安定な乳化物を得ることができるので、各種に利用されてきたが、原料の不足で該ガムの入手が困難になり、高価でもあるので食品素材としての使用が困難となってきた。そこで、原料として多量にある澱粉を用い、その代替品、製造方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • トウモロコシ澱粉にマルトースを添加混合し、190°C高温加熱を行い、その変化を追跡したところ、図1のように、37.5~25%添加で水不溶性の褐色粉末が得られた。水不溶性画分は少量の水(5~20%)を添加することによりぺ一スト状になり、グリセリン、オリーブ油などを混合するとゴム状になり、噛み応えのある物性を示した。澱粉のみを焙焼してもガム質澱粉にはならず、また、糖アルコールとの混合でも当該ガム質は得られなかった。処理温度についてはカラメル化する温度であればよく、高温の場合は処理時間を短縮することによってコントロールすることができた。図2にはトウモロコシ澱粉:マルトース=3:1、トウモロコシ澱粉のみを各種温度で処理した時の水不溶性画分収率を示した。水不溶性画分をガムデックス(GD)と略称する。
  • GDにトウモロコシ澱粉、蔗糖、水アメなどを加えてゲルを調製し、レオメーターによって測定した結果を図3に示した。破断距離は針を徐々に侵入させた時、ゲルが破れるまでの進入距離を示したものであり、GDの含有量が高くなるにしたがって長くなり、ゲルの伸びが良好になることが分かる。破断応力はゲルが破れる直前に針にかかる力を示す。これらの値からGD含有量60%以上では良好な咀嚼性が付与できることが明らかとなり、含有量を変化させることにより目的に応じた望ましい物性が得られる。また、混合する組成を変化させることによっても物性を変化させることができる。
  • 油脂分散性は各配合試料をホモミキサーでホモジナイスし、静置した後、肉眼観察をした結果、GDの7.5%懸濁液では2日経過しても油脂層の分離が起こらず均一に分散していた。対照のアラビアガムでは15%懸濁液でも、GD7.5%の系より乳化力は劣ることから、GDの乳化力の強さは著しく強力であることが分かる。

成果の活用面・留意点

澱粉とマルトースなどの糖質を混合し、単に高温加熱するだけの単純な処理で物性を劇的に変化させ、ガム質多糖を得ることができることを見い出し、生産された物質が咀嚼性で、しかも油脂分散性に優れたものであるので、その応用範囲は著しく広いと期待される。また、油脂との混合で、力ロリー低減化用食品素材として利用でき、咀嚼性、油脂分散性に限らず老化防止剤としても利用できる。

具体的データ

図1 マルトース添加によるGD生成量の変化
図2 各種温度処理による水不溶性画分の生成率
図3 GD含量が食品物性に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:ガム質多糖の生産とその応用に関する研究
  • 予算区分:交流共同研究((株)ロッテ中央研究所)
  • 研究期間:平成7年度(平成5年~7年)
  • 研究担当者:小林昭一
  • 発表論文等:ガム質澱粉、およびその製造方法 日本特許出願 特願平6-83774、平6.3.31。