複分岐サイクロデキストリン(CD)製造技術の開発

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要約

複分岐サイクロデキストリン(CD)の中で、ACタイプ及びADタイプが各種細菌に対して抗菌・静菌作用を有することを見い出した。マルトースとCDを基質として、枝切り酵素と特殊酵素とを併用して、グルコシルCDを効率よく製造する方法を開発した。

  • 担当:食品総合研究所・食品理化学部・炭水化物研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8132
  • 部会名:食品
  • 専門:加工利用
  • 対象:雑穀類、いも類
  • 分類:研究

背景

近年PL法の施行にともない特に、安全性に優れた食品保存用抗菌剤への要求が強まってきた。そこで、複分岐CDの中で、ACタイプ及びADタイプが各種細菌に対して抗菌・静菌作用を有することを見い出し、さらに、これら分岐CD類の新規な製造方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 本法の原理は図1に示したように、枝切り酵素の逆作用によりマルトースとCDから生成したマルトシル分岐CDの枝部分を、グルコアミラーゼで切断し、枝切り酵素の作用を受けないグルコシル分岐として、グルコシル分岐CDを蓄積することを特徴とする。しかし、従来のグルコアミラーゼは、同時にマルトースにも作用し、枝切り酵素の基質になり得ないグルコースになるので、マルトースに作用しないグルコアミラーゼを検索し、サッカロマイコプシス・フィブリゲラ(Saccharomycopsis fibuligera IFO 1745)が本目的に適合するグルコアミラーゼ(SF酵素と略称)を産生することを見い出した。
  • 本菌株は、ポリペプトン1.0%、酵母エキス0.5%、マルトエキス0.5%、可溶性澱粉2.0%を含む培地を用いて30~40°C、通気攪拌培養することによってSF酵素を含む培養液を得ることができた。得られた培養液を常法により、分子量10,000の限外濾過膜で濃縮、30~80%硫安飽和での塩析物を透析後凍結乾燥したものSF酵素標品とした。 本酵素の性質は、至適pHは約5.5付近であり、至適温度は約50°C付近、また、温度安定性及びpH安定性は比較的低かった。可溶性澱粉に対する作用と各種基質に対する作用の比較を表1に示す。表1のようにマルトースには僅かに作用するもののG2-CDのマルトシル部分にはよく作用する性質を有する。さらに、SF酵素と他のグルコアミラーゼ[リゾプス・二ベウス由来及びGNL(商品名:天野製薬製)]との比較を表2に示す。
  • マルトース7gとα-CD l0gを50mM酢酸緩衝液(pH5.5)17mlに溶解させた後、クレブジェラ由来のプルラナーゼ(天野製薬製)200単位/CDg及びSF酵素を15U/CDg添加して50°C、5日間反応させた結果、α-CD 55%、G1-α-CD 45%の収率であった。また、基質のCDに対するマルトーズの比率が比較的高い場合には複分岐化反応が進行してG1-CDのみではなく(G1)2-CDや(G1)3-CDなどの複分岐グルコシルCDも同時に生成した。マルトース40gとα-CD 10gを50mM酢酸緩衝液(pH5.5)30mlに溶解させた後、クレブジェラ由来のプルラナーゼ(天野製薬製)200単位/CDg及びSF酵素を15U/CDg添加して50°C、5日間反応させた結果、分岐CDは約97%(分岐CD/全CD)で、α-CD 3%、G1-α-CD 67%、(G1)2-α-CD 30%であった。

具体的データ

図1 SF酵素を用いたグルコシル分岐CDの新規製法スキーム
表1 各種基質へのSF酵素の相対活性
表2 起源の異なるグルコアミラーゼの各種基質への作用初速度

その他

  • 研究課題名:分岐多糖の生産とその応刷こ関する研究
  • 予算区分:交流共同研究(天野製薬(株))
  • 研究期間:平成7年度(平成5年~7年)
  • 研究担当者:小林昭一
  • 発表論文等:グルコシルサイクロデキストリン類の製造方法 日本特許出願 特願平6-221062、平6.8.22。