遺伝子を利用したカビ毒非産生菌と産生菌の識別法

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要約

アフラトキシン(AF)産生遺伝子のひとつであるver-1を検出可能なプローブS4-verFが開発された。本プローブとの交雑試験によりver-1を保有しないAF非産生菌とver-1を保有するAF産生菌の厳密な識別が可能になった。

  • 担当:食品総合研究所・応用微生物部・微生物検索研究室
  • 代表連絡先:0298-38- 8066
  • 部会名:食品
  • 専門:微生物・酵素
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景

麹菌Aspergillus oryzas及びA.sojaeと、アフラトキシン(AF)産生菌A.flavus及びA.parasiticusは分類学上極めて近縁であると考えられている。しかし、我国では麹菌の利用上これらの厳密な判別が必要とされている。近年Skoryらは、AF産生に特異的で必須の遺伝子の一ver-1をA.parasiticusから単離し、その塩基配列を初めて明らかにした。AF産生菌は必ずこのver-1を保有するし、保有しない菌はAFを産生できないと考えられる。そこで、本研究室別課題は、このver-1又は相同なDNAの有無により、AF産生菌か否かを判別する方法の開発を目的として実施した。

成果の内容・特徴

  • S4-verFはver-1の蛋白質コーディング領域の74%の長さで、この領域の96.2%の塩基配列が同一であった。
  • AF非産生菌のA.oryzaeとA.sojae、AF産生菌のA.flavusとA.parasiticusの各々2株について、その全DNA中にS4-verFと交雑可能なDNAが検出された。交雑したDNAの塩基配列は、ver-1と93.5~98.9%の相同性を示したことから、これらはver-1相同DNAであることが明らかになった。
  • また、S4-verFは、ver-1相同DNA検出のためのプローブとして利用可能であることが明らかになった。
  • S4-verFをプローブとした交雑試験の結果、AF非産生菌のA.oryzae 48株中ver-1相同DNAを保有するもの40株、保有しないもの8株であった(表)。
  • ver-1を保有しない菌はAFを産生できないと考えられる。よって、S4-verFを用いて、ver-1相同DNAを保有しないAF非産生菌を識別することが可能になった。

成果の活用面・留意点

得られた成果は、麹菌株の多くが属するA.oryzae及びA.sojaeにとって、新しい知見であり、平成6年度及び7年度日本生物工学会大会で成果を発表した。

具体的データ

表 A.oryzae及び近縁菌の供試菌株の由来及びver-1相同DNAの有無

その他

  • 研究課題名:毒素産生微生物の遺伝子工学的手法による高感度検出法の開発
  • 予算区分:一般別枠「安全性向上」
  • 研究期間:平成7年度(平成3年度~平成7年度)
  • 研究担当者:楠本憲一、森 勝美
  • 発表論文等:平成6年度日本生物工学会大会講演要旨集 p.183、平成6年
                      平成7年度日本生物工学会大会講演要旨集 p.209、平成7年