単分散固体脂質微粒子の作成

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要約

半導体微細加工技術を用いて作製された微細流路をもつシリコンマイクロチャネル(MC)を介して、常温で固体の高融点脂質を高温液状化し、反対側の水中に吐出させることにより均一サイズの油滴を作成する(MC乳化法)。さらに、冷却、凍結乾燥することにより単分散固体脂質微粒子を作成する。

  • 担当:食品総合研究所・食品工学部・反応分離工学研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7997
  • 部会名:食品
  • 専門:加工利用
  • 対象:油脂
  • 分類:普及

背景

固体微粒子は食品、医薬品、化成品用のマイクロカプセルなど様々な用途に利用されているが、均一な大きさの微粒子を調製することは容易でない。また、現在、魚油・動物脂などは大部分が廃油として廃棄されており、その高度利用が期待されている。そこで、本研究では水素添加魚油・牛脂等の高融点天然油脂を用いて高温でMC乳化技術を利用して液滴を作成し、それを冷却することにより単分散固体脂質微粒子を作成する。

成果の内容・特徴

  • MC乳化技術を利用した単分散固体脂質微粒子の作成:分散相にソルビタンモノパルミテートを溶解した高融点天然油脂を用い、連続相には水を用い、図1に示した装置を用いて70°Cで分散相を加圧し、MCを通過させ、連続相中に吐出させて、油滴の作成を行う(図2)。作成された油滴を回収し、室温に放置することにより凝固させ、単分散固体脂質微粒子の懸濁液を得る。この懸濁液を凍結乾燥して得られた微粒子の平均径は21.7μm、標準偏差は0.78μmであり、単分散性に優れている(図3)。
  • MC乳化に対する圧力の影響:MC乳化の際に、分散相を供給する圧力が0.5kPaから1.3kPaの範囲では圧力が高くなるほど、液滴 の作成速度が増加するが、その粒径分布は圧力の影響をほとんど受けず、圧力が1.3kPa以上になると、液滴の粒径が増大する。
  • MC乳化に対するMCの形状の影響:MC乳化はMCの形状(テラスの有無、仕切壁の有無、MC壁の高さ)に影響され、テラスと仕切壁があり、MC壁の深さが浅い場合に安定したMC乳化ができる。

成果の活用面・留意点

産業界に普及させるためには、生産効率、製造コスト等、生産性の高いシステムの開発が必要である。

具体的データ

図1 MC乳化機構の概略図

その他

  • 研究課題名:超単分散性マイクロスフィアを用いた新規な分離場および反応場の構築に関する基礎研究
  • 予算区分:生研機構
  • 研究期間:平成11年度(平成9~13年)
  • 研究担当者:中嶋光敏、鍋谷浩志、仝 継紅
  • 協力・分担関係:菊池佑二(食品工学部上席研究官)、 杉浦慎治、関 実(東京大学大学院工学系研究科)
  • 発表論文等:中嶋光敏、菊池佑二、鍋谷浩志、仝 継紅、関 実、杉浦慎治:単分散固体脂質マイクロスフィアの製造方法、平成11年3月25日(出願番号:特願平 11-78862)Sugiura S., Nakajima M., Tong J., Nabetani H., and Seki M: Preparation of monodispersed solid lipid microspheres using microchannel emulsification technique, J. Colloid Interface Sci.., 27(1),95-103(2000)