近赤外一粒分析法による混米の検出

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要約

近赤外一粒分析法により米一粒のタンパク質・水分の分布を測定し、その分布の形状から混米の有無を判定することが可能である。すなわち、単一品種の場合その成分分布は正規分布を示し、混米の場合2つ以上のピークを有する。

  • 担当:食品総合研究所・分析評価部・非破壊評価研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8088
  • 部会名:食品
  • 専門:食品品質
  • 対象:
  • 分類:研究

背景

コシヒカリを代表とする良食味米が注目される中で、良食味米への異品種の混入が懸念されている。しかし、混米を迅速に測定する手段がないため、何ら対策が打たれていない。米の流通における銘柄等の表示内容の信頼性を向上するためには、その簡易・迅速検査法の確立が緊急な課題となっている。
そこで、本研究では同一品種あるいは同一ロットにおいては米一粒の水分・タンパク質などの成分が正規分布を呈するという仮説のもとで、近赤外一粒分析法により米一粒の成分を多数測定し,その成分分布の形状から混米の有無を判定する方法を確立することを目的とした。

成果の内容・特徴

  • 考案・試作した一粒玄米近赤外スペクトル測定装置により、玄米一粒の長波長領域のスペクトルを透過法により測定することに成功した(図1、図2)。
  • 得られたスペクトルと成分値(水分、タンパク質)をもとにPLS回帰分析を行い、水分、タンパク質用の良好な検量線が得られた。測定精度はSEPの値でそれぞれ0.26%、0.37%であった(図3、図4)。
  • 開発した一粒玄米近赤外スペクトル測定装置および水分・タンパク質用検量線を用い、2品種の玄米(各品種500粒、合計1000粒)の水分およびタンパク質を測定した。その結果、単一品種の成分分布は水分・タンパク質とも両品種において正規分布を示した。2品種が混米した状態の玄米一粒の成分分布において、水分では15.6%と17.0%に2つのピークが、タンパク質では6.8%と8.8%に2つのピークが観察された(図5、図6)。
  • 以上のことから、近赤外一粒成分分析法により玄米一粒成分を測定しその分布を求めることにより、混米の有無の判別が可能であることが明らかになった。

成果の活用面・留意点

  • 水分含量の分布は試料を大気中に放置したり、混米などのハンドリング操作により変化するため、参考として扱う必要がある。
  • この方法による混米判定技術を広く一般に普及させるには、自動一粒成分測定装置の開発が重要である。
  • 穀物一粒の成分分布による異品種の混入の検査法は、玄米だけでなく精米あるいはその他の穀類にも応用できる。
  • 技術移転に伴い、特許出願を行う予定である。

具体的データ

図1 玄米用一粒セル

その他

  • 研究課題名:近赤外分光法による品種・産地の簡易判別技術の開発
  • 予算区分:パイオニア特研(一粒判定)
  • 研究期間:平成11年度(平成9~11年)
  • 研究担当者:河野澄夫、伊豫知枝
  • 発表論文等:近赤外一粒分析法による玄米異品種混入の有無の判定、第15回非破壊計測シンポジウム、日本食品科学工学会、p.206-207(1999)