裸麦抗菌ペプチド・α-チオニンの糖結合性

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

裸麦穀粒中に含まれる抗菌ペプチドの一つであるα-チオニンは、糸状菌細胞壁主要構成多糖類であるキチンやβ-グルカン、およびそれらのオリゴ糖に結合するが、α-グルカンには結合しない。

  • 担当:四国農業試験場・作物開発部・品質評価研究室
  • 代表連絡先:0877-62-0800
  • 部会名:食品
  • 専門:食品品質
  • 対象:
  • 分類:研究

背景

農作物の生産および流通における微生物被害の低減が求められている。植物が有する抗菌機能としては、ファイトアレキシンやキチン分解酵素などが知られているが、抗菌ペプチドが最近注目されている。植物由来の抗菌ペプチドには、カビの細胞壁主要構成多糖類の一つであるキチンに結合するものが多い。そこで、裸麦からキチン結合ペプチドを抽出し、その抗菌性や糖結合性を調べた。

成果の内容・特徴

  • 裸麦でキチン結合ペプチドが検出され(図1)、抗菌性が認められる。
  • 裸麦のキチン結合ペプチドは、アミノ酸組成や分子量(図2)などから、α-チオニンと同定される。
  • α-チオニンはキチン以外に、β-グルカンであるカードランや大麦グルカンに結合するが、α-グルカンである小麦デンプンには結合しない(図3)。なお、キチンとβ-グルカンは、糸状菌の細胞壁を構成する主要な多糖類である。
  • α-チオニンとラミナリン(β-グルカンの一種)の結合は、キチンやβ-グルカンのオリゴ糖で阻害されることから(表)、これらのオリゴ糖もα-チオニンに結合する。

成果の活用面・留意点

α-チオニンの抗菌作用点は細胞原形質膜であるとされているので、α-チオニンはまず糸状菌細胞壁に結合した後、細胞原形質膜に作用していると推定される。

具体的データ

図1 裸麦キチン結合ペプチドの精製

その他

  • 研究課題名:四国地域農作物に含まれる抗カビ性ペプチドの特性評価
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成11年度(平成9~11年)
  • 研究担当者:老田 茂
  • 発表論文等:Binding of α-hordothionin with chitin and β-glucan, The 10th World Congress of Food Science and Technology, Abstract Book, 60(1999)ほか