STS化プライマーを用いる精米及び米飯の一粒DNA品種判別技術

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要約

米一粒を用いてDNA判別法によって品種を判別する技術を開発することを目的とし、RAPD法の確立およびSTS化による改良を行い、精米一粒あるいは米飯一粒を試料として、高精度かつ迅速に品種判別を行うための基礎技術を開発する。

  • 担当:食品総合研究所・素材利用部・穀類特性研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8045
  • 部会名:食品
  • 専門:バイテク
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景

消費者の良食味米指向と産地間競争の激化、米輸入の開始、新食糧法の施行にともなう米流通の規制緩和と精米表示における品種・産地表示義務の制定等の背景のもとで、米の品種判別技術の開発が求められている。また、持ち帰り弁当や給食等の米飯市場はきわめて大きく、米飯段階での原料米の品種判別技術も求められている。そこで、本研究では、精米一粒あるいは米飯一粒を試料として、米の品種を判別するための基礎技術を開発することを目的とする。

成果の内容・特徴

本研究では、(1)穀粒から損傷なく高収率にDNAを抽出する技術、(2)近縁種でも明確に識別できる高識別性の技術の開発、(3)普及して実用化するための対象米の増加と簡易迅速化等の諸条件を達成できる研究開発、の3点を中心に研究を行う。

  • 精米一粒を試料とするRAPD法を確立するために、DNA抽出方法を改良し、精米一粒の判定では、塩化ベンジル存在下でのアルカリSDS法を用いることによりDNA抽出効率が向上し、極微量DNAでも識別可能な適正プライマーを選定し、実用品種による識別性の確認を行う。
  • 流通加工段階でも使用可能な炊飯米一粒による品種判別技術を開発するために、炊飯米からのDNA抽出方法を改良し、耐熱性アミラーゼとプロテアーゼKによる酵素法を開発する。これによりDNA抽出効率が向上する。適正プライマーを選定し、実用炊飯での識別性の確認を行う。
  • さらに識別性の高い品種判別技術を開発するために、識別性を高めると同時に、PCRおよび電気泳動の簡易迅速化を図る。電気泳動において識別バンドのみが現れるように、有用識別バンドからDNAを抽出し、大腸菌に組み込んで増幅し、塩基配列を決定する。その塩基配列に基づいて適正プライマーを設計し、プライマーのSTS(Sequence Tagged Site)化を行う。
  • STS化したプライマーを用いて、識別バンドDNAのみが増幅されるPCR最適条件を選定する。
  • 各種のSTS化プライマーを適正割合で配合し、PCRにおける併用を検討する。その結果、複数の適正STS化プライマーを併用することにより、1回のPCRと電気泳動によって、精米一粒あるいは米飯一粒を試料とする主要品種の識別が可能になる。

成果の活用面・留意点

  • 今後の実用化のためには、全国共通の基準が必要であり、行政部門、育種部門等と協力し、原種、原原種等を用いて、全国共通の基準データを作成する必要がある。
  • 新規育成米、外国産米、生産量の少ない品種等についても判別データを蓄積する必要がある。

具体的データ

図1 精米試料からのDNA品種判別方法の概要

その他

  • 研究課題名:RAPD法による米一粒を用いた品種判別技術の開発
  • 予算区分:フロンティア研究
  • 研究期間:平成11年度(平成9~11年)
  • 研究担当者:大坪研一・與座宏一・岡留博司・豊島英親
  • 発表論文等:1)大坪研一ほか6名:日食科工誌,46(3),117-122,1999.
    2)大坪研一ほか5名:日食科工誌,46(4),262-267,1999.
    3)吉橋 忠ほか4名:日食科工誌,46(4),250-254,1999.
    4)大坪研一ほか4名:特願平11-102709
    5)大坪研一ほか3名:特願平11-211915