イネアミノ酸合成酵素の微生物における発現系の開発と除草剤化合物検索への応用

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要約

アルギニン合成酵素の一つであるオルニチンカルバミルトランスフェラーゼ(OTC)のcDNA をイネから単離し、大腸菌の発現ベクターにクローン化した。大腸菌BL21(DE3)を宿主に用いた発現系で、全菌体蛋白質のほぼ10%に相当するイネOTCが生産された。DEAEカラムとSuperose 6Bで均一に精製したイネOTCを利用した除草剤候補化合物のアッセイ系を開発した。

  • 担当:食品総合研究所・応用微生物部・発酵細菌研究室・生物機能開発部・分子機能開発研究室、(株)エス・デー・エスバイオテック、日本曹達(株)、東北大学大学院農学研究科応用生物科学科生物制御化学講座
  • 代表連絡先:0298-38-8075
  • 部会名:食品、作物生産
  • 専門:バイテク
  • 対象:イネ
  • 分類:研究

背景

農作業の一層の省力化と環境負荷の低減を達成するために、効果的で残留性の少ない非選択性除草剤の開発が求められている。この分野の研究開発は、米国が圧倒的にリードしており、国内の研究開発力の育成・促進が急務となっている。本研究は、除草剤の新規作用点を見出し、そのin vitroアッセイ系を活用した新規除草剤の開発を目的とした。

成果の内容・特徴

  • OTCは、植物病原菌Pseudomonas syringae pv. phaseolicolaの生産するphaseolotoxin (PTX)の特異的作用点であり、本酵素を阻害する化合物は除草剤のリード化合物となることが期待される。
  • イネゲノムプロジェクトが単離したOTCの部分cDNAの配列をもとに、5'-RACE法で上流域をクローン化した。
  • イネOTC cDNA をpET22b (+)にクローン化して、pOSOT10を構築した。
  • pOSOT10を含む大腸菌BL21(DE3)をIPTG存在化で培養し、OTCを誘導した。菌体をフレンチプレスで破砕し、OTC酵素液を調製した。
  • OTCをDEAEとSuperose 6Bのクロマトグラフィーで均一に精製した。
  • OTCの阻害活性を評価するマイクロタイタープレートを用いたアッセイ系を構築した。

成果の活用面・留意点

構築したイネOTC阻害活性のアッセイ系は、阻害化合物の検索に活用できる。

具体的データ

図1 pOSOT10の構造

その他

  • 研究課題名:植物アミノ酸合成酵素を阻害する除草剤とその抵抗性作物の開発
  • 予算区分:連携開発研究
  • 研究期間:平成11年度(平成9~11年)
  • 研究担当者:伊藤 義文、三浦裕仁、日下部裕子、日野明寛
  • 発表論文等:1) 三浦裕仁、日野明寛、章 紅、榊原祥清、伊藤義文、「イネオルニチンカルバミルトランスフェラーゼ(OTC)のクローニングと大腸菌における発現」 1998年度日本農芸化学会講演要旨、 p.337
                      2) Yoshifumi Ito, Akihiro Hino, Hirohito Miura: A Rice Ornithine Carbamoyltransferase Gene,and a Vector Containing Said Gene and a Transformant. U. S. Patent No. 5,928,925. June 27(1999)
                      3) 伊藤義文、日野明寛、三浦裕仁:イネオルニチントランスカルバミラーゼ遺伝子、該遺伝子を含むベクター及び形質転換体、特開平11-243964、平成11年9月14日
                      4) 中山 修、杉山長美、伊藤義文、折谷隆之:Tabtoxine-β-lactanの別途合成、1999年度日本農芸化学会講演要旨、p.350
                      5) 齋藤正年、清田洋正、中山 修、杉山長美、伊藤義文、折谷隆之:植物病原菌tabtoxine-β-lactanの合成研究、2000年度日本農芸化学会(平成12年4月、東京)発表予定