NMRイメージングによるパンの品質評価

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要約

NMRイメージングを用いた非破壊測定により、可視的なパン構造の評価が可能である。パン生地では発酵に伴う気泡及びグルテン膜形成が時間を追って観察でき、焼成後のパンではグルテンネットワークの様子が明確に捉えることができる。

  • 担当:食品総合研究所・分析評価部・品質情報解析研究室,応用微生物部・上席研究官
  • 代表連絡先:0298-38-8057,0298-38-8073
  • 部会名:食品
  • 専門:食品品質
  • 対象:
  • 分類:普及

背景

これまで食品の品質は対象食品の平均的数値(成分値)として表されてきた。NMRイメージングは、非破壊的に食品の内部構造や成分分布を観察することができる手法である。この特徴を生かし、画像を用いた可視的な新しい食品の評価法を開発した。

成果の内容・特徴

  • パン生地の水のシグナルをもとに断面のイメージを得ることで、発酵過程における気泡の生成とそれに伴うグルテン膜の形成を、時間を追って観察することができる(図1)。
  • 焼成後のパンを8mM鉄イオンを含むアセトンに浸漬し、アセトンシグナルをもとにイメージを得ることで、グルテンネットワークを影として捉えることができ、ネットワークの状態を明確に捉えることができる。
  • 3次元測定は測定に長い時間かかるが、各種レンダリング手法と組み合わせると、パン構造を描写するために大変有効である。パン表面をなぞってイメージとしたサーフェスレンダリング画像は、パン内部の気泡とそれを囲むグルテン膜の様子をよく表した(図2)。また、イメージ画像を白黒反転して、影であったグルテンネットワークを最大強度とした後、強いシグナル部位の3次元的分布を示すMIP(Maximum Int esity Projection)法を用いて作った画像は、グルテンネットワークの3次元的展開を見るために有効な手法である。

成果の活用面・留意点

  • 本手法は材料管理、工程管理、品質管理における検査装置あるいはモニター手法として有効に利用できる。
  • そのためには実用化に則した開発を行う必要がある。

具体的データ

図1 発酵中のパン生地のNMRイメージ画像の時間変化

その他

  • 研究課題名:イメージ解析による食品品質評価法の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成12年度(平成9~12年)
  • 研究担当者:石田信昭,高野博幸
  • 発表論文等:1)石田信昭,小泉美香,小川秀次郎,狩野広美:ミクロMRIと食品科学,日食科工誌,47,407-423(2000)
                      2)H.Takano, N.Ishida, M.Koizumi, H.Kano: Imaging of the fermentation process of bread dough and the grain structure of baked breads by MRI(Magnetic Resonance Imaging) , J. Food Sci., in press.