微量元素組成を用いた米の産地判別法

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要約

玄米中の微量元素組成から,統計解析手法を用いて,同一産年のコシヒカリの産地について東北産,関東産と北陸産を分けることができる。判別には,超微量元素も重要な役割を果たしている。

  • 担当:食品総合研究所・分析評価部・分析研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8059
  • 部会名:食品
  • 専門:食品品質
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景

新食糧法の施行によって,コメのブランド化が進み,これまでよりいっそうコメの品種や栽培地が重要視されるようになってきた。これに伴って品種および産地に関する表示の正当性を明らかにする手法の開発が必要とされている。土壌等,稲が成育した環境条件に大きく影響を受けると考えられるコメ中の微量元素の含有量組成から,産地を判別する技術の確立を目指した。

成果の内容・特徴

  • 玄米は分析1点につき1g以上を用いる。玄米は,ホウケイ酸ガラス製コニカルビーカーを分解容器,家庭用ホットプレートを熱源とし,硝酸と過塩素酸で湿式分解することにより,溶液化を行う。
  • 溶液化した玄米中の微量元素は,誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES),および誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を使用して,多量元素~超微量元素の定量を行う。
  • 得られた13元素(P,K,Mg,Ca,Mn,Zn,Fe,Cu,Rb,Mo,Ba,Sr,Ni)の組成から,統計解析手法を使用して判別を行う。平成8年産の産地あるいは栽培法の異なる34試料については,元素の組み合わせでは,クラスター分析(Ward法)および主成分分析の結果から,Mn,Zn,Fe,Rb,Cu,Mo,Ba,Sr,Niの9元素による産地判別がもっとも適当であった(図1および図2)。

成果の活用面・留意点

  • 産地判別の精度を高めるためには,判別目的のコメに対応する,品種,産年,生育場所などの適切な試料収集が重要である。
  • 玄米中各元素の含有量は,米粒によって変動が認められるので,試料の代表値をとりうるサンプリングが必要である。

具体的データ

図1 Mn,Zn,Fe,Rb,Cu,Mo,Ba,Sr,Niによるクラスター分析

その他

  • 研究課題名:米中の無機超微量成分のICPMS等による米の産地判別技術の開発
  • 予算区分:パイオニア特研(一粒判定)
  • 研究期間:平成12年度(平成9~11年)
  • 研究担当者:安井明美,進藤久美子,鈴木忠直,木谷裕亮
  • 発表論文等:1)玄米中の無機元素組成による産地判別,分析化学, 49(6),405-410(2000)
                      2)誘導結合プラズマ発光分析法によるコメ1粒中の無機元素の定量,分析化学, 46(10),813-818(1997)
                      3)玄米1粒中無機元素含有量の穂上位置による差異,日本作物学会紀事,67(4),478-484(1998)